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江戸時代、江戸(東京)で働く職人たちは「宵越しの銭は持たない」と粋がった。年金や医療の制度が整っていないにもかかわらず、彼らは倹約や貯蓄と無縁だった。その日暮らしだから決して裕福ではないはず。だが、貧乏であっても、腕が立てば失業の心配はなく、将来不安も一切なかったに違いない。それ以上に、おひざ元に住む彼らは、普段の生活の中で幕府に対して揺るぎない信頼があったから、万一の場合の備えが必要と感じなかったと思える。
現在、われわれは江戸時代の人たちよりもはるかに豊かだ。国の経済力は世界第2位。江戸時代に頻繁に起こった飢饉の発生はもはやあり得ないし、社会保障が充実しているので餓死することなど想像すらできない生活環境にある。江戸時代より数段恵まれているにもかかわらず、国民の多くは、将来に対して大きな不安を抱えている。さらに、何よりも際立っているのが、国と官僚にたいする不信。1,400兆円余りにも達する個人金融資産の存在がその証拠だ。

かかる環境の下、サラリーマンの将来不安を助長する出来事があった。日本航空(JAL)の会社更生法適用申請に伴う、企業年金支給減額だ。JAL蘇生の一方策として、結局、社員OBは30%、現役社員は53%の減額に同意した。現役社員は、再生が叶い、その後業績が回復すれば、給料の面で取り返す機会が残っているが、OBはそうはいかない。OBの多くは、どこかで働いて減額分を埋め合わせたいと思っても年齢的に働く場がないのが実情だ。
連結売上1兆9千億円。グループ従業員約4万8千人。日本を代表する企業でも倒産することもあり得ることをJALが改めて示唆した。企業が経営危機に陥ったとき、サラリーマンOBにとって生活給である年金が減額されることが避けられないことも明白になった。個人資産はさらに増え続けるに違いない。
国民総生産(GDP)の伸びは企業の設備投資と個人消費に支えられている。誰もが、国益の観点から、消費を拡大することが大事と分かっている。しかし、現実の生活では、給料は上がらない、雇用が不安、年金も不透明などの理由で消費を控えざるを得ない。不安軽減のための個人資産増加は個人消費減少に直結する。
そうなれば、日本の経済はますますデフレの圧力が増すに違いない。経済は衰退し、学生の就職難は改善されないどころか、もっと悪化するだろう。したがって、企業倒産時の年金減額を防ぐために、企業に年金積み立ての義務化と独立勘定の設定について法制化を急ぐ必要があると考える。

年金はサラリーマンだけの問題ではない。プロスポーツの選手たちこそ、年金の充実は喫緊の課題だ。プロ野球は年金制度があるが、Jリーグとbjリーグには制度そのものがない。プロ野球選手の年金受給額は最大で年間142万円。生活の支えになる金額ではない。また、選手の現役平均寿命が10年にもかかわらず、受給資格を得るには10年の在籍が必要なので、平均して、半数の選手が年金の恩恵を受けていないことになる。これでは、プロスポーツはリスクの高い職業といわれても抗弁できない。
あるプロ野球球団職員に聞いたところ、サラリーマンの子息が選手になる比率は低いそうだ。将来的な安定を求める傾向の強いサラリーマンは、自分の子供がプロ選手として大成しなかったときのリスクを負いかねる気持ちが強いと思われる。
スポーツ産業拡大のためには、多くの子供がスポーツに興じ、「プロ」になる夢を追い求めることが重要だ。プロの選手は努力次第で、サラリーマンの数十倍の年俸を手にする可能性があるから、年金は不必要との考えもあるが、それは間違っている。なぜなら、プロで成功しないかもしれない選手の生活を最小限でも支えることが選手人口増大につながるからだ。
だから、プロ野球に倣い、Jリーグとbjリーグも契約金制度を設け、たとえば、契約金の半額を強制的に年金に回すシステムを構築すべきである。MLBの選手会(労働組合)が最初に経営者と交渉して合意したのが年金と健康保険。年金が労働者にとって最重要案件であることをMLB選手会は40年以上も前にわれわれに教えている。

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長崎市が広島市と検討していた2020年夏季五輪共同開催を断念すると公表した。極めて残念だ。広島と長崎は他の都市と異なる。世界ひろしといえども、原爆によって壊滅的な打撃を受けた都市は広島と長崎以外にないし、今でも多くの住民が被爆の後遺症に悩んでいる。両市は、自らの体験を通じて「核廃絶」と「世界平和」のメッセージを世界中に発することができる数少ない都市なのだ。だからこそ、残された広島市の招致活動を応援したい。

一方で、被爆地の広島は政治色が強すぎると敬遠される可能性がある。さらに「スポーツに政治を持ち込むな」との意見も多い。だが五輪は、過去、国際政治の影響を常に受けてきた。五輪が世界規模で行われる以上、1936年のベルリンや2008年の北京が国威高揚に利用されたように、政治的思惑から逃れることはできない。だからこそ、五輪を通じて世界に「平和主義」を訴える機会を広島に与えても良いのではないだろうか。
広島と長崎の五輪招致表明に、IOC(国際オリンピック委員会)もJOC(日本オリンピック委員会)も初めから冷淡だった。IOCは、五輪憲章が「1国1都市開催」と定めており、2都市共催は認められないと否定的だった。だが、スポーツのルールが変わるように、五輪憲章も、時代の流れに応じて変わるのは当然だ。文言に固執する必要はない。現に、1974年に五輪の絶対的精神的支柱であった「アマチュア」の文言が憲章から削除された。選手たちが満足して競技ができるように大会全体を効率よく運営すれば良いのだから、アマチュアの文言削除に比べれば、「共催」排除は説得力に乏しい。
五輪は巨大なイベントになってしまった。現状から判断する限り、大都市でなければ五輪招致が困難となった。国家の財政支援も相変わらず必要だ。金持ちの国の、その中の大都市だけに五輪開催が許されるような仕組みがベストなのだろうか。別の見方をすれば、五輪の規模が大きくなったのだから、複数の都市が連携して効率よく開催するのであれば「共催」を認めても良いのではないか。器用な日本人が苦もなく共同開催をやってのける様を世界に見せたいものだ。
1984年のロサンゼルス大会から五輪はプロ(すなわち、商業)化が一気に進んだ。以来、放送権利料やスポンサーシップの高騰によって、開催都市の組織委員会の収支は黒字に転じた。

もちろん、五輪を開催するに当たって、空港・港湾や鉄道網の整備、高速道を中心とする道路網の拡充、競技施設の改修や新規建設など、公共事業的投資が欠かせないので、五輪に対する国家の経済的負担は依然として大きい。開催都市と国家の協力が不可欠ならば、それこそ、地方分権を推し進めようとしている日本では、東京よりも地方都市での五輪開催が時代に合っている。だから、広島の五輪招致に魅力を感じるのだ。都市選定では、中立・公平であるべきJOCが、現時点では明らかに、広島(と長崎)よりも東京を支持している。確かに、都市機能が充実しているので、東京が圧倒的に有利である。加えて、世界の人々も東京の方を良く知っている。
一方で、東京はある種致命的欠陥を抱えている。超一流かどうかを別にすれば、東京には何でも揃っている。無いものはない。しかも、東京都も国も、五輪の力を借りなくても、必要ならば、公共施設を作る力が備わっている。だから、都民は五輪に期待するものが少ない。都民の考え方が多様化しているのも東京都に逆風だ。都民の大多数が五輪招致を是が非でも実現したい、と熱狂的にならないからだ。地方分権の観点からも、広島を中心に、中国と九州の主要都市が連携して、地球環境に最大限配慮した五輪実現を目指すべきだ。広島は東京よりはるかにハードルが高い。だからこそ、広島(と長崎)は2020年にこだわらず、開催が実現するまで毎回、「平和」をスローガンに招致活動を続けるべきである。広島(と長崎)こそ、「継続は力なり」を示して欲しい。

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2010年1月15日(金)

昨日(14日)は2009年度最後のゼミ授業でした。最後と言うことで、旧ゼミ生(4年生)が主体となって、現ゼミ生(3年生)との合同「飲み会」を企画していましたので、4年生も数人ゼミに参加しました。
4年生も同じでしたが、現ゼミ生には、前期にディベートとパネルヂスカッション、後期にテーマごとの研究発表、をさせました。彼らは、司会または発表をする時、A4の用紙5~10枚のスピーチ原稿が必要です。司会や発表をしない時でも最低1,200字のレポート2枚を提出する義務がありました。
ゆとりの授業に慣れた学生に毎週レポート提出を求めるゼミは無いでしょう。しかし、旧ゼミ生もそうでしたが、現ゼミ生も毎週欠かさずレポートを提出しました。だから、ゼミの授業が終わる前に、彼らにつぎのようなメッセージを送りました。
「帝京大のラグビー部の学生日本一を見たでしょ。彼らは日頃鍛錬を重ねているから負けていても自信満々だった。見ている方も負ける気がしなかった。諸君も同じ。今時、毎週1,200字のレポートを2枚またはそれ以上を1年間に亘って出し続ける学生はそう居るものではない。1年間続けたことに意味がある。スポーツマネジメントについて十分な力量が付いた。「自信」をもって就職活動に臨んで欲しい。そして、人のため、世のために、有意義な人生を送って欲しい」

合同飲み会では、旧ゼミ生が元気でした。新聞によれば、全国平均で、大学就職内定が73.1%だそうです。4人に1人が未定なんです。飲み会に出席していた4年生は、就職、大学院進学、起業立上げ、が決まっていました。だから、みんな明るい顔をしていました。
現3年生も来年の今頃明るい顔をしてくれていると良いな、と思いました。

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プロスポーツリーグや大学スポーツ組織は、テレビ放送や商品化などの権利を保有する。放送権を買ったテレビ局は、放送権利料に番組制作費とテレビ局の電波料を上乗せしたCMタイムを番組スポンサーに販売する。また、商品化では、通常、ロイヤルティは卸売価格(小売価格の60%程度)の6%で設定されるので、小売店でNYヤンキースの帽子を野球ファンが1000円で購入した場合、ライセンシーである野球帽子メーカーからライセンサーであるMLBに36円が支払われる。日常的に、スポーツ団体や組織は、選手や職員に給料、スタジアムなどの施設に使用料、弁護士や弁理士事務所に法的サービス料、等を支払う一方、球団から給料をもらった選手は代理人に手数料を支払っている。

このように、権利を保有するスポーツ団体や組織は、多くの種類の産業や企業と取引をしており、米国スポーツ専門誌の統計によると、2001年に4大プロリーグ、マイナーリーグ、その他プロスポーツ、大学が稼いだ収入の合計は約318億ドル(約2兆9000億円)、同年のスポーツ関連消費総額は1,946億ドル(約18兆円)だった。このことから、スポーツ産業全体の経済規模は、権利保有団体・組織が稼ぐ収入の6~7倍であることが推察できる。
2001年当時の売上が35億5000万ドルだったMLBは、2008年には65億ドルに、NFLは同年比較で40億ドルから80億ドルに伸ばしているので、おそらく、米国のスポーツ産業は現在、30兆円に近い規模に達していると推測する。

米国の手法を日本に適用すると、権利を保有するスポーツ団体(プロ野球、Jリーグ、bjリーグ、その他)の総収入は約2000億円。それを6~7倍するとスポーツ産業の規模は約1兆3000億円程度とみなすことができる。だが、日米のGDP(国内総生産)比較を加味すると、日本のスポーツ産業が13~15兆円規模で米国の肩に並ぶことになる。やり方次第で10倍の成長が期待できる。米国に比べ、日本のスポーツ産業はなぜ小規模なのか。その理由を3つ挙げる。
1つ目は、リーグと球団数が少ないために、リーグと球団の総収入が小さい。
2つ目は、米国の大学が4大プロリーグの売上合計と同じ程度の収入を得るのに対し、日本の大学の収入は極めて少ない。
3つ目は、権利の現金化に精通した「スポーツ経営(Sports Management)」の専門家が少ないーことだ。

米国の大学スポーツ組織はスポーツ経営のプロが管理している。昨年6月には、WTA(世界女子テニス)ツアーの最高経営責任者が、PAC-10(UCLAやスタンフォード大学など、アリゾナ州・カリフォルニア州・オレゴン州・ワシントン州の10大学で構成)のコミッショナーに就任した。
アマチュアのスポーツ組織であっても、組織の管理者はプロなのだ。だから、米国では、プロ・アマを問わず、スポーツ団体や組織にスポーツ経営を学んだ人材が膨大な数就職し、スポーツ経営を教える大学(UniversityとCollege)が200以上存在する。

日本の大学も、ビジネスの機会がないわけではない。2日にわたり、120キロの沿道を人々が埋め尽くす箱根駅伝、国立競技場に5万に近い観客を引き付ける大学ラグビーなどは、豊富な金脈があるのに掘る量が少ない。サッカーや野球も、物足りない。スポーツ経営の専門家が組織に入り、得た収入を大学施設に還元する仕組みを作り上げると、スポーツ産業が必ず活性・拡大する。
大学卒業生の就職氷河期が続くが、プロスポーツリーグが収入を増やし、周辺産業や企業をもっと潤わし、大学のスポーツ組織が「商業」に目覚めてくれたら、日本のスポーツ産業が拡大する。そうなれば、産業の成長に比例する形で大学卒業生を吸収することができるのに、と思わざるをえない。

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昨年は政治が大きく動いた。今年はプロスポーツリーグが動く番だ。
スポーツを取り巻く環境は決して良くない。世界的景気後退がスポーツ界にも打撃を与えたからだ。そのため、米国のプロリーグは職員のレイオフ(一時解雇)に踏み切った。日本のプロリーグは人員削減では効果がでない。赤字体質故に人員を絞り込んでいるからだ。だからと言って、親会社や出資会社に全面依存することもできない。なぜなら、企業環境が悪化しているのに加え、今年は広告宣伝費用が冬季オリンピックとサッカーのワールドカップ(W杯)に配分されると予想されるからだ。逆風だからこそ、今年、日本のプロリーグは「災いを転じて福となす」べく、抜本的構造改革を講じるべきなのだ。

プロ野球 : プロ野球では2004年のストライキの後、経営者と選手会が構造改革の推進について合意した。表面的には、改革の具現化は交流戦に止まり、経営の面では何も進展していないように見える。だが、その後の5年の間に球界は確実に地殻変動が進んだ。球団と球場の経営の一体化が黒字をもたらすことを仙台が示したため、球場を管理するのは、札幌を除くパリーグ5球団と、セリーグの阪神と広島を合わせ、7球団に増えたことが一例だ。一方で、球団と球場の経営の一体化が進んでもチケット料と球場内物品販売だけでは大幅な黒字を得ることができないことも分かった。
また、巨人戦一辺倒ではテレビからの収入増加の見込みが立たないことも明白になった。もはや、インターネットを利用してその時その時で最も熱戦が期待できる対戦カードを視聴者に選ばせる手法をとらない限り地上波放送局による野球中継の視聴率向上はありえない。その上で、地上波放送に続くBS・CSではそれぞれの特性を生かした試合中継を行うべきだ。
球団経営者の多くは、既に、球団と球場の経営の一体化と全国市場からの収入増加が経営黒字化の2本柱と気付いている。今年はコミッショナーの出番が来る。だから、コミッショナーにビジネスマンの役割を担う準備を勧める。

Jリーグ : 今年は南アフリカでW杯が開催される。日本代表のグループリーグ突破を期待したい。代表チームが決勝トーナメントに進めば、大フィーバーが起ること必至だが、グループリーグ敗退でもW杯人気は続くと予想する。問題はW杯がJリーグの収支を悪化させる可能性が高いことだ。NHKを除く民放局は、放送権利料+番組制作費+電波料から成るCM料を番組スポンサーから徴収するが、放送権利料が高いのでテレビ局と広告代理店は必死になってスポンサー探しをするに違いない。W杯に廻される広告料の一部はJリーグ広告料の減少に繋がることもあり得る。
また、業績悪化の折、出資会社の減損処理も簡単ではない。結果、Jリーグのクラブの大半は来年度決算で赤字幅が拡大し、Jリーグ全体で債務超過に陥る可能性が高い。協会とJリーグが共同で権利処理会社を作り、権利の一括管理で「売り手市場」を形成して、獲得した収入を分け合う形を取らない限り、経営破綻を来たすクラブが続出するだろう。手をこまねいている暇はない。

bjリーグ : Jリーグの中には地方自治体が直接クラブに出資している例がたくさんある。山形のように県が設立した公益法人がクラブの運営会社になったり、大分のように県知事がクラブの社長を任命する、などの例もある。だが、プロバスケットボールのbjリーグ各球団は地方自治体の不公平な扱いに苦慮している。不思議なことに、地方自治体はアリーナ使用において、事業税を払っているbjリーグ傘下の球団よりも税金を納めていないアマチュア団体を優先している。しかも、bjリーグの球団はアマチュアよりも数倍高い使用料を取られている。なぜだか、誰もこの不合理な理由を説明できない。
地方自治体がJリーグのクラブに出資しているのはスポーツが生み出す経済の活性化を期待してのことだ。当然、この理屈はbjリーグにも適用できる。bjリーグはこのことを地方自治体に強く訴えるべきだ。そうすれば、今年から、地方自治体はJリーグのクラブに施す優遇策をbjリーグ各球団にも与えることになるだろう。

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