日本サッカー協会に設けられた2018年ワールドカップ(W杯)招致検討委員会の初会合が昨日(20日)開催されました。W杯を単独で招聘して、国内でのサッカーへの関心を更に高めたいとする協会の意図には賛成です。
唯、W杯招致が協会の喫緊の施策であると言われれば疑問があります。なぜなら、選手供給元であるJリーグの経営基盤が脆弱だからです。W杯招致と言った将来の夢を語ることによって、今日の窮状から逃避しているように感じざるを得ません。Jリーグの現状から判断して、W杯招致活動の前に、Jリーグの経営力強化を協会とJリーグで共同して行うべきと考えます。
サッカーの世界では、協会とプロリーグは表裏一体です。なぜなら、どこの国も同じですが、国際大会では、代表監督の要請に応じて、プロリーグのクラブは属する選手を解放(release)する義務を負います。代表チームが各クラブによって十分に鍛え上げられた選手によって組成されなければ、世界との競争に伍していけません。その前提は、各クラブの経済的基盤が安定することです。
クラブの収入を増やし、選手に応分の配分を行うことが大事です。サッカー選手が経済的に恵まれることが重要です。なぜなら、サッカー選手を目指す若者に経済的「夢」を与えることが、サッカー競技人口を増やし、頂点に上るまでの競争を高めてくれるからです。
Jリーグを立ち上げた最大の理由はW杯参加に相応しい選手を輩出することだったはずです。Jリーグ創設の原点に戻って、Jリーグの経営強化を図る時期にあると考えます。
阪神が、MLBのドーピング実態調査報告書である、いわゆる、「ミッチェル・レポート」に名前が記載されていたジェフ・ウイリアム投手と来季の契約を締結したことを公表しました。レポートの公表から1週間経っていません。阪神はやや「ミッチェル・レポート」を軽視したような気がします。
MLBによるドーピングの実態調査は昨年(2006年)の3月末からスタートしました。この調査の責任者であるジョージ・ミッチェル氏は元上院院内総務で、北アイルランド和平を実現した政界の実力者でした。ソルトレーク冬季オリンピック招致買収疑惑でもアメリカオリンピック委員会の特別調査委員長を務めています。
実力者のミッチェル氏が20ヶ月間に亘って行った調査の結果が「ミッチェル・レポート」なのです。409ページの分量がありますので、日本人が読み通すには3週間位かかるだろうと言われています。アメリカでは、関係者が必死になってレポートを読み、内容を分析しているようです。
阪神はミッチェル・レポートを十分に読みこなした上で、ウイリアム投手との契約に踏み切った方が良かったような気がしてなりません。最近、国際反ドーピング機構(WADA)の監視は厳しいものがあります。阪神がドーピングに対していい加減な対応をしているような事態になれば、球団首脳の交代になりかねません。ドーピング問題は怖いですよ。
読売ジャイアンツ(巨人)がヤクルトを自由契約になったアレックス・ラミレス外野手を獲得することが確実になりました。巨人は前横浜のクルーン投手と前ヤクルトのグラインガ-投手も獲得しています。
同じセリーグのヤクルトは2007年のリーグ最多勝投手とリーグ打点王を失うことになりますので、飛車と角を喪失するようなものです。ヤクルトが失う戦力と巨人が得た戦力から生じる格差は、「戦力の均衡」の視点からは興醒めな出来事です。
作季31セーブのクルーンを失う横浜と得る巨人との戦力格差も同じ現象です。これでは、ヤクルトと横浜が戦う前から来年のペナントレースから離脱したようなものです。
私の意見は巨人や読売新聞の人たちとは異なりますが、巨人は2年連続でインターンを夏休みに受け入れてくれていますし、現役では唯1人帝京大の学生を来春採用してくれました。読売の事業部も意見交換に応じてくれます。
巨人とは根本的な意見の相違を認識した上での付き合いが続いています。そんな環境の中、12月4日(火)の講義に桃井社長に来てもらいました。講義の冒頭、桃井社長は、私の拙書、「スポーツと国力」を読んだ上で、「巨人の自由競争とNFLの戦力均衡の論争に決着が付いた」との意見には与しないと力説されていました。
自由競争の下で、他球団の主力選手を奪って優勝することを野球ファンは望んでいるのでしょうか?野球ファン=巨人ファンではありません。巨人ファンは最大数を誇りますが、25%程度です。巨人の愚行によって残り75%が巨人を無視すれば、巨人戦のテレビ視聴率は永久に上向かないでしょう。
プロスポーツリーグは勝ったり負けたりが一番良く、応援するチームのはらはらどきどきの勝利と悔しい敗北の連続が最も客が入りますし、テレビ視聴率を上げる要因になります。
本日の授業、「スポーツ産業構造論」に浦和レッズの白戸広報部長を招きました。レッズには夏休みに2年連続でインターンを受け入れてもらっています。その関係もあって、講義依頼を快諾してもらいました。
今年のレッズは戦績も業績も絶好調でした。Jリーグで最後まで優勝争いを演じ、更には、日本のクラブでは初めて、アジア・チャンピオンズリーグ(ACL)優勝、クラブワールドカップ(クラブW杯)3位を勝ち取ったことも相俟って、2006年70億円だった収入が今年(2007年)は80億円に達する見込みだそうです。J1クラブの平均収入が30億円ですからダントツの稼ぐ力を誇っています。
しかし、世界の強豪クラブの収入を比較しますと、2006年の数字ですが、1位のReal Madridが約467億円、10位のLiverpoolで約282億円、20位のBenficaが約136億円ですから、世界のトップレベルに追い付くには一層の努力が必要です。
レッズの地域密着の応援は今やプロスポーツリーグの見本になっています。6万人収容のスタジアムをほぼ毎試合満杯にする集客力は驚異的です。白戸部長によれば、現状の延長で100億円までは達成可能だが、それ以上の収入増を目指すには、新しい挑戦が必要との意見です。
浦和の挑戦とは、従来の地域密着に加え、ACLやクラブW杯の定連になって「浦和レッズ」のブランドを海外に普及させることです。いよいよ、レッズが海外進出を視野に入れたことになります。ACL優勝とクラブW杯3位がレッズに大きな自信をもたらしたと思われます。
ただ、レッズだけの努力では限界があります。なぜなら、テレビ・マーチャンダイジング・スポンサーシップの権利処理をJリーグが行っているからです。現在、Jリーグからレッズに分配される金額は7億円程度です。総収入の10%に過ぎません。
Jリーグからの分配金がクラブ収入の50%以上にならなければ、レッズといえども世界のトップクラブの仲間入りは困難です。レッズの挑戦には、Jリーグの経営努力(収入増)の下支えが不可欠です。
MLBのドーピングの実態に関する調査報告書(ミッチェル・レポート)が公表されました。409ページに及ぶレポートは80人を超える選手を実名で挙げ、また、コミッショナー・オーナー・選手・球団関係者を含めMLB全体に薬物汚染の責任があると指摘しています。衝撃的内容として、メディア報道では、1919年のブラックソックス事件に匹敵するスキャンダルだとのコメントも出ています。
これまでMLBは国際反ドーピング機構からドーピング検査実施に消極的と言われてきました。MLB選手がオリンピック参加に消極的なのも薬物に汚染されているから、とか、野球がオリンピック競技から外される原因の1つがMLBの消極的反ドーピング施策とも言われてきました。80人を超える選手が薬物に汚染されていた事実が明らかになったことで、なるほどと頷けます。
ミッチェル・レポートは日本のプロ野球にも少なからぬ影響を与えることになるでしょう。何故なら、必ずMLB選手がこれまでと比較して非力になるからです。50本を超えるホームランを打つ選手は少なくなり、150キロのボールを投げる投手も少なくなります。これからは、走攻守揃った選手の評価が必ず上がります。日本の球団の1番や2番バッターが狙い目になるでしょう。
MLBと日本のプロ野球の力の差が縮まり、年俸格差が広がれば、多くの日本人選手がMLBを目指します。場合によっては、高校または大学卒業後直ちにMLB(またはマイナーリーグ)入りを挑戦する選手が出てくると予想されます。
日本のプロ野球が手を拱いていますと、力のある人気選手は日本から居なくなることになります。ミッチェル・レポートは日本のプロ野球に徐々に強いインパクトを与えることなるでしょう。福留選手や黒田投手の年俸はミッチェル・レポートが与える先取り部分を含んでいるのかも知れません。







