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男子ゴルフの今季メジャー最終戦、全米プロ選手権はドイツ人のアルティン・カイマーが優勝した。彼にとってはメジャーおよび米国ツアー初優勝である。この結果、昨年以来8度のメジャー大会で6人が初優勝を果たしたことになる。世界のゴルフ界は、タイガー・ウッズがスキャンダルで精彩を欠く間に、誰が勝つか予想もつかない混戦状態が続いている。日本のメディアは現状を「群雄割拠」とか「ドングリの背競べ」と呼び、若手有望株の石川遼選手に期待を掛けるが、石川に限らず、日本人ゴルフ選手は世界の壁が高く厚いようだ。今回の全米プロ選手権でも日本人選手の5人全員が予選落ちした。

男子4大メジャー大会は全英オープンが1860年に、全米オープンが1895年に、全米プロ選手権が1916年に、マスターズが1934年にスタートしている。大会はマスターズ以外、毎年異なるゴルフコースで開催され、大会自体が長い歴史を持つが、選ばれるコースも長い歴史とともに世界一の選手を選出するに足る高い難易度を誇っている。昨今はゴルフ用品の改良が進み、飛距離が年々伸びることもあって、迎え撃つコース側も威信をかけて、全体の距離を延ばしたり、ハザードを増やして難易度を上げて選手の技量に対抗する傾向にある。だから、コースに順応できない選手は優勝杯を手にすることができない。この関係は、赤ワインとチーズの関係に似ている。上等のワインにそれに相応しいチーズでなければ、折角の味が調和しないからだ。ゴルフも選手とコースのお互いが頂点を極める間柄であるとき、奇跡・感動・興奮をもたらしてくれる。従い、選手には難コースを克服するために不断の精進と技を高める探究心が求められる。

長い歴史があるメジャー大会だが、日本人ゴルフ選手はこれまでメジャー大会で一度も優勝したことがない。日本には約2400のゴルフ場があり、ゴルフの盛んな国の一つである。しかし、残念なことに日本人ゴルフ選手は世界のレベルに遠く及ばない。それが不思議で仕方がない。 
レジャー白書によれば、2008年の日本のゴルフ産業の市場規模は1兆6760億円。その内訳はゴルフ用品が4000億円、ゴルフ場が1兆1210億円、練習が1550億円となっている。レジャー白書を疑うわけではないが、08年のゴルフ場利用者数は907万人。ゴルフ場収入が1兆1210億円だから、1人が1回当たり12万円を上回る額をゴルフ場で使っていることになる。本当か?

元来、日本のゴルフ産業は社用族が支えてきた。だから、ゴルフがお金の掛かるスポーツであることは承知している。とは言え、延べ900万人が平均で12万円以上も1日のゴルフに使っているとは信じ難い。これが事実とすれば、若年層や年金生活者はゴルフができない。これでは、ゴルフの大衆化が進むわけがない。
海外のゴルフ場のプレー料金は安い。例えば、米国のパブリックコースならば、1回当たり20ドル(約1800円)でお釣りがくる。一流のメンバーコースでも200ドルを上回ることは殆どない。日米で土地の値段が違うことは理解するが、ゴルフのプレー料金が庶民的にならない限り、日本から世界一の選手が次々に生まれることはないだろう。
かかる環境だから、将来願望を含め、18歳の石川遼に期待が掛かる。だが、彼を一人前のゴルフ選手に育てるために彼の家族が払った経済的負担は想像し難い。逆の見方をすると、家族の犠牲がなければ一流の選手になれないようでは、そう簡単に世界に伍する選手は生まれない。
全米プロ選手権に日本人選手が全員予選落ちした情報に接して、20歳前後の選手は渡米して米国のツアーに参加しないと世界一は実現しないな、と強く思った。

 

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スポーツ産業は、プロリーグや大学スポーツを核に、多種多様な産業・企業・団体を巻き込んで裾野の広い組織体を形成している。例えば、スポーツ用品メーカー、試合中継や結果を伝えるメディアやIT(情報技術)業界、スタジアムやアリーナの建設や改修に絡む不動産や建設関連業界、スタジアムやアリーナに飲食物を提供するフードサービス会社、地域密着の受け皿となる自治体、著作権・商標権・肖像権を管理する法律事務所や代理人などがスポーツビジネスを下支えしている。

米国のスポーツ専門誌が行った米国スポーツ産業の 実態調査では、4大プロリーグや大学などの権利保有者が約4兆円の収入を得、スポーツ関連分野全体で約24兆円が消費されている。すなわち、産業規模は権利保有者の収入の6倍程度であることを示しているのだ。
この手法に従うと、国民総生産(GDP)比較では、日本1対米国2の関係だから、日本のスポーツ関連消費が10兆円強でほぼ米国に比肩する。だが、日本のスポーツ団体(プロ野球、Jリーグ、大学、その他)の収入は米国に比べ極端に少なく約2000億円。それを6倍するとスポーツ産業全体の規模は1兆円強になってしまう。日本のスポーツ産業は適正規模の10分の1に過ぎない。

ところが、ある経済専門の週刊誌が日本のスポーツ産業規模は「10兆円に迫る」と報じていた。その内訳は、スポーツ興行が約2000億円、スポーツ用品が約2兆円、スポーツ施設が約2兆円、公営ギャンブルが約5兆1000億円となっている。スポーツ用品やスポーツ施設に関して腑に落ちない個所があるが、それよりも、公営ギャンブルの金額には驚きを超えてあきれてしまう。米国の統計でも約2兆円の公営ギャンブル収入が前述の24兆円の一部になっている。
だから、農林水産省、経済産業省、文化科学省が所管する日本の公営ギャンブルは、何と、米国の倍以上の金額を動かしていることになる。加え、総務省所管の宝くじが1兆円を超えている。日本は、中央官庁の出先機関が胴元を務めるギャンブル大国なのだ。

仄聞するに、公営ギャンブルの収益金は幾つもの補助金として形を変え、数多くの公益法人に流れているそうだ。国民注目の事業仕分け人が宝くじ収益金の流れに踏み込んだように、早晩、公営ギャンブルから生まれるお金の流れが事業仕分け人によって明らかになり、公営ギャンブルの組織が天下りの温床になっていると非難されることになるだろう。
そこで、一つ提案したい。公営ギャンブルの収益金をいったん国庫に組み入れる措置をとってはどうだろう。その上で、必要な公益法人だけを残し、ドイツがゴールデンプランと称してスポーツ施設の充実に大金を投じたように、収益金の5%相当分を子供が走り回れる公園、芝生のサッカーグランド、室内水泳プール、観客席のあるスタジアムやアリーナなどの建設や改修に使う手立てを講じて欲しい。
そうすれば、内需拡大の公共事業になる。しかも、国民がスポーツに興ずる機会が増え、地域経済の活性化に寄与するばかりでなく、結果、国民の体力強化と健康促進に繋がることになるし、医療保険や介護保険の費用負担軽減にも役に立つ。

この策が国民に歓迎されないはずがない。だから、事業仕分け人が、警察庁管轄も含め、ギャンブル関連の公益法人の金の流れにメスを入れることができるか否か、多大な関心を持って注視している。

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1990年代のバブル経済崩壊後の国民の最大関心事は景気回復だった。経済を良くするには、個人消費を増やし企業の設備投資を拡大する必要がある。そのためには、民間企業の業績改善とそれを支える政府の景気刺激策が不可欠である。しかし、自民党政権下では無為無策が続いた。10年くらい前までは、「政治は三流だが経済は一流」と言われたものだが、最近では経済も三流に成り下がった。だから、民主党がマニフェストに掲げた歳出削減(無駄減らし)や天下り全面禁止を国民は支持したのだ。
政権交代から半年がたった。日米の核持ち込み密約文書の存在のように自民党政権下では絶対に暴露されるはずのない事態が現実化したが、「政治とカネ」についての説明不足やマニフェスト項目に対する実行力の欠如に伴い、民主党政権に失望が広がっている。鳩山首相と小沢幹事長の舌足らずには落胆するものの、それよりも、両者が関係する金額の数千倍から数万倍と目される天下りを始めとする補助金依存症法人の無駄遣いに全くと言ってよい程切り込めず、プライマリーバランスに向かうどころか、過去最大の国債発行に至って愕然とし、天を仰いで長嘆息するのみだ。

地方分権の推進もマニフェスト項目の一つだ。不可解なことに、鳩山政権は地方分権の実行を迫る地方分権推進委員会(分権委員会)に冷淡だった。分権委員会は自民党政権時代に設けられた組織だが、政権が代わっても求めるものは同じだったはず。実は、地方分権ほど霞が関の抵抗が強いものはない。霞が関の官僚が持つ予算と権限が地方自治体に移管されるのだから当然だ。中途半端な政治力で突破できる代物ではない。第2次臨時行政調査会(臨調)ですら完全な骨抜きに終わっている。
中曽根内閣の全面的支援を得て、臨調は土光敏夫元経団連会長の下で5年有余討議を重ねた。その内容をまとめた書籍が87年に刊行されている。読んだ人の話では、土光臨調の答申で実現したのは、霞が関に直接影響を及ぼさない三公社(国鉄、電信電話・たばこ専売)の民営化だけと言っても過言ではないそうだ。

臨調報告から20年以上たった現在、分権委員会が協議を重ね、実行を求めた内容の大半は臨調が掲げた項目が下敷きだ。民主党政権にやる気がないと、分権委員会の3年間の活動がまたもや無駄になる可能性が高くなる。しかし、一方で、地方自治体は権限を受け入れる準備が整っているのだろうか、疑問がある。たとえば、空港・新幹線・高速道路。地方の要望通りに作った結果、日本には98の空港があり、大半は赤字だ。空港が赤字なのに、新幹線と高速道路が完成する所や開通に向け建設中の所もある。独立採算ベースにすれば、空港・新幹線・高速道路の全てで赤字の自治体が続出するに違いない。そんな自治体に予算と権限が譲渡されるのは危険極まりない。

地方自治体の役割の一つにスポーツ施設の充実がある。オリンピックに出場するような選手の強化だけがスポーツの振興ではない。新幹線や道路の陳情はあっても、地方自治体から国民の健康増進や体力向上についての施策推進の声が聞こえてこないのは残念だ。税金が健康維持や体力作りに使われることに反対する人はいないはずだ。だが、我が国の運動施設は到底GDP世界第2位に見合うものではない。貧困すぎる。
米国やイギリスでは、球場(スタジアム)の建設が経済の活性化に寄与している。球場・アリーナ・プール・スケートリンクの建設は地方自治体の重要な仕事だと思うが、読者の意見は如何。

 

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「先が見えない」と良く聞く。この言葉は、バブル崩壊後、多くの企業経営者の口から発せられるようになった。成長がなく、目標となる指針がない経済状況が続いて閉塞感が漂う中で、次の打つ手が見つからない彼らにとって格好の言い訳になっているようだ。そして、先の見えない経営者が取る策は、成果が見えやすい経費削減だ。人員減、内定取り消し、求人縮小、求人撤回など、比較的経営者自身に痛みが伴わない事例が多い。

社員や社員になる学生は企業にとって大事な消費者なのに、消費者に将来不安を抱かせることが企業にプラスになるはずがない。「背に腹はかえられない」とも言うが、それに倍する信用を失っているのが「見えない」のだ。契約のいとも簡単な破棄もそうだ。相手先からの信頼喪失が資産の劣化につながることも分かっていない。極め付きが政府頼み。本当に、彼らには「一寸先は闇」なのかもしれない。
しかし、実際に、「先の見える」人は存在しない。人間は先が見えないから苦労するし、一方で、だからこそ面白い。だが、歴史書をひもとくと、将来を見通して成功した人がたくさんいるのも事実。彼らに共通していることは「洞察力」が抜きんでていることだ。

洞察力は広い教養と深い知識と多くの経験によって高めることができる。私は、学生から「何のために勉学に励む必要がありますか」と問われると、躊躇なく、「洞察力を磨くためです」と答えている。学生の洞察力を高める手助けをすることが私の仕事、とも考えている。しかし、洞察力だけでは十分ではない。「準備」を怠りなく続ける強い「意思」と努力もまた必要だ。
そう考えると、その道で一流といわれるプロは準備に余念がない。洞察力に裏打ちされた自身を備えているからだろう。スポーツ言うならば、イチローが典型的な例だ。だが、イチローのような選手は例外中の例外。先の見えない人が凡人であるように、多くのアスリートには、心おきなく運動ができる環境を与え、やる気を高めてやることが大事になる。

バンクーバー・オリンピックが終わった。韓国が国家を挙げて競技の強化に取り組んだ結果、46選手で14個のメダルを取り、日本はおよそ倍の選手を送り込んだが、5個だった。日本人選手に対する落胆論に加え、長野オリンピックの遺産を食い尽したので、将来はもっと厳しいとの悲観論もでている。だが、過去の大会でもメディアが騒ぐほどには多数のメダルを取っていないし、中国や韓国にメダル獲得で劣ることは、さほど「洞察力」がなくても見通せる話だった。2006年に「スポーツと国力」(朝日新書)で、私が国力とメダル数は比例すると書いたときと状況は全く変わっていない。施設の貧困と選手強化不足が改善されていないのだから、当然の結果なのだ。
日本と同じ、第二次世界大戦敗戦国のドイツは、1960年から1975年の15年間にわたって、国民の体力強化のために国を挙げてスポーツ施設の拡充に取り組んでいる。ゴールデンプランと呼ばれる国民運動がそれだ。その成果は、今回のオリンピックでも、金10個、合計30個のメダル獲得となって表れている。スポーツ界のリーダーであるJOCが取り組むべきことは、ドイツ同様の、ゴールデンプランの策定と実施である。
国民が望むメダル数の増加は、国民の健康と体力の強化の延長線上になくてはならない。JOCに鋭い洞察力と強い意思を期待したい。 

 

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冬のオリンピックの華、女子フィギュアスケートは予想通り、韓国のキム・ヨナと日本の浅田真央両選手のトップ争いとなった。2人は前回のトリノ大会に年齢制限で参加できなかったため、今回のバンクーバーがオリンピック初出場だった。2人はともに1990年9月生まれの19歳。身長も体重もほぼ同じ。似た体形の2人はこれまで世界の舞台で競い合ってきており、自他ともに認めるライバルだ。2人の競技には日本や韓国のみならず、世界中が注目した。
競技の順番もテレビ観戦者を喜ばせてくれた。ショートプログラムとフリーともに交互に相前後して滑ってくれたので、2人が演じる最高難度の技を連続して堪能できた。素人目にも優劣の比較が容易だった。

今年1月にソウルに行った。その時、韓国では若者を中心にキムの人気がすさまじく高いのに驚かされた。オリンピック直前だったからかも知れないが、地下鉄の駅や化粧品店など、市街地の至るところにキムのポスターが貼られていた。雑誌や新聞にもキムの写真が氾濫しており、韓国の人たちの期待の大きさを実感した。だが、キムの場合、われわれ日本人が浅田に求めるものとは異なっているようだった。韓国では期待の裏返しとして、韓国の女子フィギュアスケート史上初となるメダル獲得は当然で、これまでの実績から「金」が当たり前とみられていたのだ。それだけに、彼女に想像を絶する精神的重圧がかかっていたことも事実で、ソウル滞在中、ひいきの引き倒し状態だから、精神的にはキムよりも浅田が絶対的に有利と思ったものだ。

ところが、バンクーバーの本番では、キムはショートもフリーもミス一つなく完璧に演じ切った。彼女の精神的強さと揺るぎない自信が世界最高得点を生み出したのだ。キムの勝因を分析すると、カナダ人コーチのブライアン・アーサー氏の下で練習に励む作戦が功を奏したようだ。カナダに拠点を移すことで、少なくとも2つの利点を得ることができた。第1に、韓国内での狂騒的熱烈応援から逃れ、カナダで静かに暮らせること。第2に、アーサー氏がオリンピックの銀メダリストでカナダの英雄でもあるため、会場を埋め尽くすカナダ人の好意的応援は期待できること。
このようにみると、キムの勝利は4年間にわたるキムの周到な準備が浅田を上回った結果とみなすことができるようだ。今度は浅田が2014年のソチに向けキムに勝る戦略を築き、そのすべてを消化しなければならない。

キムと浅田の演技を見て、スポーツの世界はライバルが必要であり、ライバルの存在がお互いを高めあうことになることも確認できた。キムが「真央はもう一人の私」と言うのも納得できる。ビジネスの世界も同じだ。ライバルがいないと緊張感が薄れかねない。たとえばトヨタ自動車。米国の自動車会社が衰退したため、トヨタが必死になって追いかける自動車会社がなくなった。現在、売上高は約20兆円。利益剰余金が1兆円あれば超優良企業なのに、トヨタは11兆円を超える。財務内容は強固で、販売力は盤石。技術にも自信満々。死角がないと思われたトヨタだったが、消費者からの訴えに緩慢に対応したため、米国を中心に痛烈な非難を浴びるに至っている。ライバルとなるべき競争相手がいなくなったら、脇が甘くなることをトヨタが示唆した。企業にも同じことが言えるが、自分自身の成長を高めるために、われわれはあえてライバルを見つけ、相手にもライバルと認めてもらい、お互いが切磋琢磨する人間関係を作り上げることが必要だ。キムと浅田はライバルの有り難さを教えてくれた。

 

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