野球賭博が原因で相撲界が未曽有の危機にひんしている。NHK が名古屋場所のテレビ中継をとりやめ、警視庁が相撲部屋など三十数か所を賭博開帳図利の疑いで家宅捜査を行った。捜査の結果、名古屋場所終了後、さらに大きな激震が相撲界を襲う可能性がある。
相撲界は、部屋の管理手法や力士育成が独特との理由で、協会中枢に第三者の介入を拒んできた。今、仲間内だけの経営の弱点を露呈することになり、その組織にメスが入ろうとしている。
今回の事件に関連して、2つの疑問と1つの提案がある。
第1の疑問は、「監督官庁」の役割だ。相撲界の不祥事は今回だけではない。不祥事が起きるたびに理事長が監督官庁の文部科学省に出向き謝罪するものの、不祥事の再発防止は掛け声に過ぎなかった。問題は相撲界にあるが、文部科学省は「何を」監督しているのだろう。成果のでない(監督できない)部署は”不要”が一般的。しかも、プロは自己責任が建前で、元来、監督官庁は不要だったのではないだろうか。
第2は「公益法人」についてである。相撲協会はれっきとしたスポーツ興行団体であるにもかかわらず、公益法人だ。力士の養成が公益事業に当たるそうだ。その論理に従うなら、プロ野球のファームやJリーグのユース育成は選手養成だから、プロ野球やJリーグも公益法人になっても良いことになる。官庁のさじ加減で何とでもなるのだろうか。しかも、協会は毎年立派に利益を出してきた。今回の不祥事で一転赤字に陥る可能性があるものの、売上に比較して十分過ぎる内部留保もある。税制の優遇措置の基準は何だろうか。
提案は、近代的スポーツマネジメントの導入を協会に薦めることである。
部屋の機能を力士育成に限定し、十両以上の力士は社会的責任と自己責任を持つ個人事業者として独立させる。その上で、協会にすべての権利と権限を集中してはどうだろう。古今東西、身内だけの管理システムが不祥事に対応できなかった例は枚挙にいとまがない。米国で生まれた「コミッショナー」制度は、八百長試合がきっかけで作られた。業界と利益を共にしない第三者が業界の監視役(裁判官)となり、この制度をすべてのプロリーグが採用した。現在、コミッショナーは、裁判官の役目に加え、ビジネスマンとスポークスマンの機能を持っている。最も特徴的なことは、コミッショナーの周りをビジネスと法律の専門家が固めていることである。相撲界も同様のシステムを導入して近代化を図るべきである。
土俵の上を力士の真剣勝負の場とする一方で、土俵の外は相撲界と全く縁のない人物を協会トップに招き、彼の下に、ビジネス、総務・管理、法務などの部門に専門家集団を配することを勧める。例えば、本場所と地方巡業を初め、茶屋などを含む全ての金銭的取引はビジネス部門が仕切り、コストセンターの行司・呼び出し・床山などは総務・管理部門に属することにすればよい。
最も重要なことは、元力士の部屋代表と第三者が同数となる協会の意思決定機関を作るとともに、協会を非営利団体にすることである。協会が得た収入から十両以上の力士に給料を払い、協会の事務所、役員や職員の給料、その他経費、基金などを控除後、残高は育成力士の数に応じて各部屋に分配する。将来的には、各部屋にもスポーツマネジメントの専門家を招き入れ、さらには、後援会などを少数株主として迎え入れて株式会社化を目指すべきである。
外部の人を入れると元力士が失業すると危惧する声があがるだろう。だが、専門家による協会の事業拡大で解決できる。元力士が専門家と一緒になってビジネスの面で活躍する機会も増えるに違いない。
サッカーワールドカップ(W杯)南アフリカ大会開催まで2週間と迫った。日本代表は6月14日に標高1400メートルのブルームフォンテーンで初戦を、そして24日に1500メートルのルステンブルクで3戦目を戦う。
今回のW杯は標高の高い所で行われるので、各国代表は直前となった今、高地対策のトレーニングに余念がない。そして高地は空気が薄いので、2つについて対応が不可欠だ。
1つ目は持久力の低下。持久力の指標となる最大酸素摂取量が標高1500~2000メートルでは約10%低下する。そのため、平地では90分をフルに走り回ることができる選手でも高地では後半に入ると足が止まる可能性が高い。
2つめは空気抵抗の低下。空気が希薄になるので、空中のボールが速く、またより遠くに飛んでいく。
前者は選手交代のタイミングが深くかかわってくる。勝利するには、監督が選手の疲れを的確に判断し、持ち駒をフルに、且つ、有効に使う冷静な采配が必要となる。後者はピッチに立つ11人が低い空気抵抗の感覚を同じレベルで維持することが大事になる。特に、点につながりやすいフリーキックやコーナーキックの時にボールをける選手と受ける選手たちがボールの飛距離感覚を共有する必要がある。
私は、家族と、1982年8月から1985年5月まで米国コロラド州のデンバーにいた。デンバーに在るコロラド州議事堂の前の階段中央に標高1600メートル(1マイル)を示す金の鋲が打ち込まれ、デンバーが「マイル・ハイ・シティ」と呼ばれる証しとなっている。デンバーの生活は、普段は平地とさほど変わらない。体が薄い空気に慣れてしまうからだ。しかし体験的に明らかに平地とは異なることが2つあった。
1つ目は日本からのお客さんや出張者の反応。彼らから必ずと言っていい程、デンバーでは酔いが普通より早く回る、とか、昨日は眠りが浅かった、と聞いたものだ。2つ目はゴルフボールの飛距離。平地よりも番号が2つ増えるクラブを選択しないと飛び過ぎる。だから、日本から来てすぐのお客さんに距離が出るのでゴルフがうまくなったような気がすると喜んでもらったことが多々あった。
今回のW杯日本代表はほとんど期待されていない。大方の予想は予選敗退。一向に決定力不足が改善されないからだ。スポーツ全てに言えることだが、サッカーも点を取らなければ勝つことができない。直前の国際試合でも調子が上向く兆しが全く見えなかった。大会直前でなければ監督更迭も不思議ではない状況だし、決勝トーナメント進出可能性大とサッカーファンを煽る環境でもないので、メディアもおとなしい。残念ながら、大会前から決勝進出をあきらめるムードが漂っている。
だが、私は「薄い空気」に一縷の望みを託している。日本代表選手は、普段ミドルゾーンからゴールを狙うシュートはしない。強豪国代表との違いがここにある。しかし、今回、予選3試合のうち、2戦が高地で行われる。高地では飛距離が出るので、日本人選手もゴールを狙える。中盤からのシュートを多用すべきだ。従来のパスを繋ぐ方法と組み合わせれば、攻撃に幅がでてくる。シュートが多くなればゴールキーパーがボールをはじくなどミスをする確率も高くなる。
最も期待したいことは、空気が薄いので、選手たちが急にキック力が付いたような気分になることだ。上手になったと自信を持ってくれれば、面白い結果が出るかもしれない。なぜなら、「自信」ほど人間を変えるものはないからだ。
万に一つかもしれないが、代表23人全員が自信満々になって、一波乱起こしてくれることを期待したい。
下の文章は2月13日の毎日新聞「闘論」のオリジナル原稿です。
Jリーグの経営戦略は長期的と短期的の両面から考察する必要がある。長期的視点に立てば、クラブの数は増えれば増えるほど良い。なぜなら、スタジアムに足を運ぶサポーターの数が確実に増えるので、リーグ全体の収入と価値が上昇するからだ。しかし、短期的視点では、今、クラブ数を増やすタイミングではなく、リーグと各クラブの財務力を強化すべきである。そうしないと、資金難のクラブが続出し、リーグそのものが経営破綻に陥りかねない。私は、クラブの大半が黒字経営になるまでクラブの増加は控えるべきと考える。
リーグは、プロ野球を反面教師にし、全国市場で展開するテレビ、マーチャンダイジング(商品化)、スポンサーシップについてはリーグの一括管理とする一方、地域市場のチケットと物品販売ではクラブによる地域密着の営業に力を入れることを基本方針としている。経営理念としては間違っていない。しかし、現実は理想から掛け離れた状態だ。原因は、全国市場からの収入がすくないため、リーグからクラブへの配分額がクラブ収入の10%程度に止まっていることに尽きる。この配分不足はクラブにとって致命的だ。
結果、各クラブは収支を整えるために収入の約90%を地域市場に依存せざるをえない。だが、地域密着の観客動員は掛け声倒れになっている。たとえば、英国のプレミアリーグが観客席を平均で92%、米国のNFLが96%、NHLが91%、NBAが89%埋めているのに対し、リーグは50%以下の水準に過ぎない。だから、各クラブは出資会社に広告料の名目で経営支援を仰がざるをえない。だが、出資会社が大企業のクラブは黒字を確保できるが、それ以外のクラブが黒字を確保することは極めて難しい。
リーグが公表している08年クラブ情報によれば、クラブの資本金合計額が約162億円に対し、累積の損失が約118億円に膨らんでいる。約44億円の損失で債務超過になるが、08年の当期損失が約12億円だったので、リーグの財務は危険水域に入りつつある。
かかる状況にも関わらず、リーグはJ2参加クラブを22に伸ばす予定だ。これからリーグに加わる予定のクラブは、出資会社の資金力が乏しく、赤字が予想される。また、リーグの収入が横ばいの中でのクラブ数増加はリーグからの分配金が減少することになるので、弱小クラブの赤字幅拡大が避けられない。
上記を鑑み、リーグの収入増加策の一つとして、全国市場向けのテレビ・マーチャンダイジング・スポンサーシップの権利を日本代表チームを抱える日本サッカー協会と共同して現金化することを勧めたい。欧州と違い、プロリーグの歴史の浅い日本では、代表とリーグを分離して応援することに慣れておらず、人気とビジネスが代表チームに集中する傾向にあるからだ。しかも、この提案は決して奇抜なものではない。ドイツのブンデスリーガが協会とテレビの共同管理を行っている。
欧州のリーグも英国のプレミアリーグが新設され経済的に潤うまで貧乏だった。リーグ開始時の1993年、リーグ収入はプレミアと肩を並べる水準だったが、今、J1の収入はプレミアの5分の1に過ぎない。
リーグは、欧州各国のビジネスのやり方を比較・研究し、その上で独自の経営戦略を組み立てて欲しい。
昨年は政治が大きく動いた。今年はプロスポーツリーグが動く番だ。
スポーツを取り巻く環境は決して良くない。世界的景気後退がスポーツ界にも打撃を与えたからだ。そのため、米国のプロリーグは職員のレイオフ(一時解雇)に踏み切った。日本のプロリーグは人員削減では効果がでない。赤字体質故に人員を絞り込んでいるからだ。だからと言って、親会社や出資会社に全面依存することもできない。なぜなら、企業環境が悪化しているのに加え、今年は広告宣伝費用が冬季オリンピックとサッカーのワールドカップ(W杯)に配分されると予想されるからだ。逆風だからこそ、今年、日本のプロリーグは「災いを転じて福となす」べく、抜本的構造改革を講じるべきなのだ。
プロ野球 : プロ野球では2004年のストライキの後、経営者と選手会が構造改革の推進について合意した。表面的には、改革の具現化は交流戦に止まり、経営の面では何も進展していないように見える。だが、その後の5年の間に球界は確実に地殻変動が進んだ。球団と球場の経営の一体化が黒字をもたらすことを仙台が示したため、球場を管理するのは、札幌を除くパリーグ5球団と、セリーグの阪神と広島を合わせ、7球団に増えたことが一例だ。一方で、球団と球場の経営の一体化が進んでもチケット料と球場内物品販売だけでは大幅な黒字を得ることができないことも分かった。
また、巨人戦一辺倒ではテレビからの収入増加の見込みが立たないことも明白になった。もはや、インターネットを利用してその時その時で最も熱戦が期待できる対戦カードを視聴者に選ばせる手法をとらない限り地上波放送局による野球中継の視聴率向上はありえない。その上で、地上波放送に続くBS・CSではそれぞれの特性を生かした試合中継を行うべきだ。
球団経営者の多くは、既に、球団と球場の経営の一体化と全国市場からの収入増加が経営黒字化の2本柱と気付いている。今年はコミッショナーの出番が来る。だから、コミッショナーにビジネスマンの役割を担う準備を勧める。
Jリーグ : 今年は南アフリカでW杯が開催される。日本代表のグループリーグ突破を期待したい。代表チームが決勝トーナメントに進めば、大フィーバーが起ること必至だが、グループリーグ敗退でもW杯人気は続くと予想する。問題はW杯がJリーグの収支を悪化させる可能性が高いことだ。NHKを除く民放局は、放送権利料+番組制作費+電波料から成るCM料を番組スポンサーから徴収するが、放送権利料が高いのでテレビ局と広告代理店は必死になってスポンサー探しをするに違いない。W杯に廻される広告料の一部はJリーグ広告料の減少に繋がることもあり得る。
また、業績悪化の折、出資会社の減損処理も簡単ではない。結果、Jリーグのクラブの大半は来年度決算で赤字幅が拡大し、Jリーグ全体で債務超過に陥る可能性が高い。協会とJリーグが共同で権利処理会社を作り、権利の一括管理で「売り手市場」を形成して、獲得した収入を分け合う形を取らない限り、経営破綻を来たすクラブが続出するだろう。手をこまねいている暇はない。
bjリーグ : Jリーグの中には地方自治体が直接クラブに出資している例がたくさんある。山形のように県が設立した公益法人がクラブの運営会社になったり、大分のように県知事がクラブの社長を任命する、などの例もある。だが、プロバスケットボールのbjリーグ各球団は地方自治体の不公平な扱いに苦慮している。不思議なことに、地方自治体はアリーナ使用において、事業税を払っているbjリーグ傘下の球団よりも税金を納めていないアマチュア団体を優先している。しかも、bjリーグの球団はアマチュアよりも数倍高い使用料を取られている。なぜだか、誰もこの不合理な理由を説明できない。
地方自治体がJリーグのクラブに出資しているのはスポーツが生み出す経済の活性化を期待してのことだ。当然、この理屈はbjリーグにも適用できる。bjリーグはこのことを地方自治体に強く訴えるべきだ。そうすれば、今年から、地方自治体はJリーグのクラブに施す優遇策をbjリーグ各球団にも与えることになるだろう。
新聞が、戦力外通告、契約更改、移籍など、プロ野球やJリーグに所属する選手たちの動静を連日、報道している。毎年繰り返される選手たちによる喜怒哀楽。その中にあって、同年配の中山雅史と山崎武司の喜びは少し違った。
J1のジュビロ磐田一筋だった元日本代表の中山は42歳。今季末、戦力外通告を受けた。だが、現役続行を希望し、J2のコンサドーレ札幌への移籍が決まった。一方の山崎は来期42歳を迎える。2004年に一度クビを宣告されるが、今季、楽天のクライマックス・シリーズ進出に貢献。2億5千万円プラス出来高の2年契約を楽天と結んだ。大ベテランの契約を参考に、プロ野球とJリーグの将来について考察する。
プロ野球は現在、12球団で組成。球団支配下の選手総数は約800名。プロ野球選手会によると、選手寿命は約10年。毎年70~80名が引退し、ほぼ同数の新人が入団する。だから、40歳を超えた山崎は例外的存在だ。
Jリーグのクラブ数はJ1とJ2それぞれ18、合計36。Jリーグキャリアサポートセンターによれば、選手登録数は約1,000名。毎年約130名が加入し、同数が登録を抹消される。登録抹消(Jリーグ引退)の平均年齢が26歳。20代の引退が70%を占める。そんな環境の中での中山の現役続行は、山崎以上に珍しい。
ほぼ同じ年齢の山崎と中山だが、プロ野球とJリーガーの年俸になると格差が歴然としている。年俸1億円以上をスポーツエリートの証しの一つとするならば、プロ野球は71名。およそ10人に1人が超エリート。一方、Jリーグは10名。約100人に1人だから、サッカー選手が1億円プレーヤーになることはまさに至難の業といえる。
かかる環境の下で、プロ野球がMLBの経営水準に近付くには、全国市場での権利の一括管理は避けて通れない。 そのためには、逆説的だが、プロ野球は1億円プレーヤーをもっと増やす施策を講じるべきである。プロ野球は50年以上にわたって12球団による2リーグ制を維持している。年間の観客動員数は約2,500万人。微増が続いている。各球団が全国市場での権利処理を競合しながら行う現下のシステムでは、全国市場からの収入は増えない。
むしろ、テレビ視聴率低下に伴い収入減が予想されるので、球団経営はチケット販売に大きく依存することになる。しかし、それではMLBに半永久的に近付けないし、阪神と巨人以外の球団の黒字も実現しない。だからといって、権利の一括管理がすぐに実現するとも思えない。 だからこそ、MLB選手並みとは言わないまでも、年俸額を引き上げ、1億円プレーヤーを増やすべきなのだ。なぜなら、高い選手年俸を賄い、球団経営を黒字にするには全国市場で現金化できる権利の一括管理が不可欠だと大多数の球団経営者が認知することが大事だからである。その意味で、経営的に矛盾するかも知れないが、選手会がもっと強くなることが重要なポイントのように思える。
一方、Jリーグは最低年俸を設定し、その額を徐々に引き上げる方策を取るべきだ。その実現のために、Jリーグ加盟クラブの拡大策を一時中断して各クラブの収支を整えることを優先することを勧める。Jリーグ選手協会によれば、選手契約はABCに区分される。新人や実績のない選手はC契約からスタート。A契約だと最低でも480万円、上限はなしだが、C契約とB契約の基本給は480万円で、最低年俸の設定はない。
したがって、経営の苦しいJ2のクラブに属するC契約やB契約の選手の中には、J2より下部組織のJFLに参加する企業クラブの選手(社員)よりも年俸が低い例が続出する。これでは、Jリーガーが子供やアマチュア選手に「夢」を与える存在から懸け離れかねない。だから、Jリーグでは1億円プレーヤーを増やすよりも、最低年俸の設定と引き上げが急務の策といえる。







