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今年のプロ野球(NPB)のドラフトの目玉は花巻東高校の菊池雄星投手だった。「20年に1人」の逸材と目された彼に対して、国内の全球団と米国大リーグの8球団が獲得に興味を示した。そのため、彼はドラフト前に国内外の20球団と面談を行い、その上で、国内球団への入団決意を披露し、涙も流した。競合球団による抽選で彼との交渉権を引き当てた埼玉西武ライオンズは、入団早々から彼に特別メニューを課して、エリートコースを歩ませる計画だそうだ。彼の成長を期待したい。

ドラフトは1936年、米国のNFL(プロアメフト)が最初に採用した。このシステムでは、1順目は前年度最下位球団から順次新人選手を選択し、2順目以降は前回と逆の順番での採択となる。(日本で「完全ウェーバー式」と言う)ドラフト導入の目的は2つあった。 
1つ目は、最下位球団に最優先の選択権を与えることから生まれる球団間の戦力均衡保持。2つ目は、1位指名新人選手の契約金を最高額に設定することから実現する契約金高騰の抑制。そして、もう1つ利点があった。どの球団が最下位になるか不確実だから、入団前に裏金が動くことがないことだ。したがって、この仕組みは球団選択の自由を奪われる選手には不都合だが、経営者に多大な利益をもたらす。だから、米国のプロリーグも当然のごとくこの制度を採用した。リーグによって運営方法は若干異なっているものの、根本的な考え方は変化なく今日に至っている。

ところが、NPBは米国のドラフトとは似て非なるものを作ってしまった。ドラフトに自由競争の原理を持ち込み、裏交渉を行い、金の力で有望選手を抱え込むことを「経営努力」とへ理屈を付け、ドラフトの基本的な考え方を曲げてしまった。各種の金が裏で飛び交い、競争に負けたスカウトが自殺する事件も起こった。かかる環境では、野球を教育の一環と主張する日本高校野球連盟(高野連)がNPBの姿勢を容認するわけがなく、NPB関係者と球児たちとの接触は、たとえ親子であっても厳禁となった。この関係が濃淡はあるが、大学や社会人のアマチュア団体にも影響を及ぼした。

かくて、プロ選手たちとアマチュアの選手や組織との会話がなくなり、現状のドラフト制度が続く限り、彼らがアマチュア野球の指導者になる機会も極度に少なくなった。しかしながら、NPBセカンドキャリアが実施した「引退後の進路希望」調査で、学生野球指導者が1位、スカウトなどの球団フロントが3位、プロ・社会人などの指導者が5位となり、選手たちが保有する技術を第2の人生でも活用したい気持ちを強く持っているいることが判明した。

ドラフトを経て、NPBの球団に毎年約70人が入団する。彼らは最高の才能を持ったスポーツ界の超エリート集団だ。だが、彼らの平均年俸は約3,700万円。選手寿命は約10年。したがって、平均生涯年俸は3億7,000万円。生涯年俸に関する限り、一流企業の平均的サラリーマンと同程度なのだ。
加えて、彼らの年金は満額でも年間142万円。しかも、受給開始が55歳だから、引退から年金開始までの長い期間を耐える必要がある。彼らが指導者になりたい理由がここにある。
昨年の田沢選手に次いで菊池選手も大リーグを目指す可能性が高かった。もはや、NPBが選手を国内に縛り付けることも限界に達しつつある。選手たちの大リーグ行きを阻止する手段は、日米間の選手年俸の格差を縮小することだが、一朝一夕にできることではない。
現状、今できることはドラフト改革だ。選手たちに日本で野球を継続して欲しいのであれば、NPBは、「完全ウェーバー式」のドラフトを採用し、選手たちに引退後、高校・大学・社会人の野球チームの指導者になる道を与えてやるべきだ。もちろん、学生野球協会や高野連の了承を得る必要がある。そうなれば、大学の野球部員は在学中に教職の資格を取ることになるだろう。私は、彼らが今以上に勉学に励む姿を見てみたい。

 

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