2012年5月
« 4月    
 123456
78910111213
14151617181920
21222324252627
28293031  
色は記事がある日です。ご覧になりたい方はクリックください。

カテゴリー

最近の記事

アーカイブ

プロフィールにあるように、私は1970年入社組。会社の同期は204名。当然、入社後に歩いた道は全員異なる。私のように早期退職勧奨を受け入れたり、海外駐在中に不慮の災難にあったり、途中で所在不明になったり、家庭の事情で退社を余儀なくされたり、等々の理由で定年前に会社を辞めた仲間も多い。一方で、第1次定年の60歳時に、年収は大幅に減少するものの4年間の定年延長を選択した仲間もいた。延長組の多くは職務中に培った専門的知識が深く、余人をもって代えがたい特殊な才能を持っていた。だから、会社に残る選択をしたのだが、今年の3月末全員退き、遂に本社で働く同期がゼロになった。

定年の規定がなく、会社が必要とするか否かの判断が年齢では無く知識と才能であれば、彼らはもう数年は会社に貢献できたであろう。だが、才能よりも年齢を優先するのがサラリーマンの社会なのだ。
サラリーマンと違って、プロスポーツ選手の引き際は難しい。特にチームに多大な貢献をした選手ほど、「引退」を球団の勧めでは無く、自分自身で決断しなければならない。球団に長く在籍した選手の引退にはルールが有るようで無いからだ。今シーズン末も自分で決断を下さなければならない選手が数多く居てもおかしくない。そんな状況下で、驚くべき記録を打ち立てたベテラン投手が日米に表れた。

4月15日、プロ29年目46歳8カ月になる中日ドラゴンズの山本昌投手が先発勝利を挙げ、最年長記録を達成したのだ。同期が現役を退いて、やや意気消沈していた私に山本投手は元気をくれた。2日後の17日、更に元気の出る記録が生まれた。米国メジャーリーグ(MLB)のコロラド・ロッキーズのジェミー・モイヤー投手が49歳4カ月で勝利投手になってMLB歴代最年長の記録を樹立した。才能と気力があれば年齢に関係なく勝利投手になれることを2人の投手は証明したのだ。

しかし、一方で、2人は引き際がより一層難しくなったと予想する。経営的視点から山本投手の立場と判断基準を考察してみる。
彼の09年(26年目)成績は、6回登板して1勝4敗、推定年俸が1.5億円。1勝当りコストは1.5憶円。普通の会社であれば「無駄使い」と糾弾されるであろう。10年(27年目)は8回登板して5勝1敗、推定年俸が1.2憶円。1勝当りコストは2,400万円。先発ローテーションから外れ、本人も球団も「引退」を意識せざるを得ない状況だったに違いない。しかし、5勝が現役続行に繋がった。11年(28年目)は登板機会なし。推定年俸1.0億円。彼はこのままでは辞められないとの思いが強かったと推察される。そして、12年(29年目)4月に勝利。12年の推定年俸が4,000万円。この1勝のコストは昨年分を加え、当面1.4億円。

山本投手が今シーズンこれから何勝するか分らないが、少なくとも5~6勝しないと、1勝当りコストが高く球団の立場からすれば採算が悪いことは否めない。ドラゴンズ生え抜きの選手である彼は、引退後いつかは指導者としてドラゴンズのユニフォームを着ることを夢描いているに違いない。球団もそのような計画を持っており、だからこそ、長年に亘る貢献を考慮して「戦力外通告」を彼に出すことを逡巡してきたと思われる。要は、「引退」は彼次第の状況と言うことになる。だから、難しいのだ。最年長記録達成が花道になるのか、それとも、現役続行に固執するのか、興味深い。

斯く言う私も9月で65歳。今年は大事且つ重要な節目の年と考えている。だから、昔の同僚(今も仲間だが)やベテラン選手の去就が一際気になる。今シーズンは始まったばかり。山本投手とモイヤー投手には勝利数を重ねて欲しい。私と同じような心境の団塊世代に刺激を与えてくれたら有難い。

トラックバック URL : http://blog.nippon-sports.com/wp-trackback.php?p=1121

以下、オリジナル原稿

サッカーが国際化するに従いクラブの経営が難しくなり、今ではスポーツリーグのなかで最も難しい舵取りを要求されるようになった。その要因として、(1)サッカーが世界中に普及し、どこの国にもプロリーグが存在すること(2)プロリーグがアマチュア組織の各国協会(FA)、大陸毎の連盟(例えば、欧州のUEFA)、及び、国際サッカー連盟(FIFA)の管理下にあること(3)リーグ戦の他に国際試合が増えて、クラブは賞金を重要な収入と捉え、有力な選手はクラブの試合と出身国代表の試合の双方に出場しなければならないこと(4)契約が終了した選手はどの国のどのクラブとも自由に契約(移籍)ができること(5)各クラブがユースと女子を育てる義務を負っていること、が挙げられる。これらを踏まえ、プロリーグを中心にして、現在のサッカーの組織構造(欧州を例)を図式化すると以下のようになる。

    クラブ代表            国代表
 クラブワールドカップ   FIFA    ワールドカップ 

チャンピオンズリーグ   UEFA    欧州選手権

     FAカップ      FA   国際親善試合

     リーグ戦     プロリーグ

権利処理+賞金             リリース
          クラブ     クラブ

         ユース 女子  ユース 女子 

プロリーグを保有する全ての国がこの構造と同じまたは類似の形態を取るので、恰も各国がフランチャイズ化し、同時に鎖国した状態になった。現に、一昨年イングランドのプレミアリーグが公式戦を1試合増やして海外10カ国での開催を試みた時、10カ国及びFIFAとUEFAが即座に反対を表明したためにプレミアの提案は頓挫した。このことは、各国のリーグ及びクラブが公式戦を海外で行うことができないことを意味する。つまり、外国のクラブと非公式戦を行うことが、クラブが海外で試合を行う唯一の方法となったのだ。

国際試合は大陸毎の連盟とFIFAの主催で行われる。大陸の連盟とFIFAが主催する試合の魅力は賞金である。だから、強豪クラブは国際大会出場を目論むのだ。例えば、UEFAが主催するチャンピオンズリーグ(CL)に出場するには、国内リーグ戦で上位の戦績を収めなければならない。CLでは他国のリーグ戦で上位に入ったクラブと対戦して勝ち抜かねばならない。CLで優勝すると、クラブワールドカップに出場し、大陸毎の優勝クラブと世界一の覇権を争うことになる。従い、各国のリーグ戦で優勝争いを演じるクラブは国内だけではなく、他国の有力クラブとの戦いを視野に入れて戦力を整えざるをえない。

上記の経営環境をクラブの収支項目に反映させるとすると、以下のようになる。

 収入      クラブ収支     支出
 チケット           選手年俸
 物品販売          選手関連費用
 テレビ放送権        スタジアム使用料(維持管理費)
 マーチャンダイジング   事務所経費
 スポンサーシップ     役員・職員給料
 賞金            ユース・女子育成経費

UEFAのCL出場を目指すクラブは、賞金獲得と選手年俸のバランスが黒字と赤字の分かれ目になる。しかし、賞金が勝ち負けに左右される変動収入に対して選手年俸はシーズン開始前に決まるので固定経費である。しかも、米国のプロリーグのようにサラリーキャップや課徴金制度を設けて選手年俸を管理下に置くこともしていない。国単位で選手年俸に制限を課すと国際大会で勝ち抜くことが難しくなるからだ。また、UEFAやFIFAが国際レベルで選手年俸を調整すると、EUの諸条約に抵触しかねない。結局、選手年俸の高騰を抑制できない状況が続いている。それはクラブの収支に直接影響を及ぼすことになる。イングランドのプレミアリーグを例に取ると、2010年度、20クラブの内、税前利益を出したのは4クラブに過ぎない。税前損失の上位4クラブは優勝争い常連の、Manchester City、Manchester United、Chelsea、Aston Villaである。また、プレミアリーグ全体の収支を見ても、リーグ収入に占める人件費(選手年俸+役員・職員給料)の割合が68%に達している。米国プロリーグの選手年俸の割合が50%前後であることを勘案すると、プレミアの比率は極めて高い。即ち、選手年俸がクラブ経営を圧迫していることを如実に物語っている。

現在、クラブの経営が苦しいのはイングランドだけではない。日本のJリーグ含め、各国のリーグとクラブが収支を整えるのに苦労をしているのだ。かかる状況を鑑み、UEFAに続きアジアサッカー連盟もクラブライセンス制度を導入して、CLに出場するクラブに収支を整える(黒字化)義務を課すことになった。2013年度出場クラブから適用される。

しかしながら、サッカー界の組織構造を見ると分るように、FIFAやUEFAが自らの財源を確保するために国際大会を作り出し、莫大な収入を得るシステムを構築したことは明白。しかも、選手はより高い報酬を求めて自由に国境を越えることができるのに、クラブは自国内に閉じ込められたまま。更には、クラブはおろかリーグも選手年俸を抑える手段を持たない。この状態で、クラブに黒字化を迫るのは責任転嫁以外のなにものでもない。

同じようなことが日本の教育の現場で起っている。文部科学省(文科省)は子供の才能を多方面に伸ばすために「ゆとりの学習」を始め、同時に、新設大学を増やすと共に既存大学の学部・学科の増加や新設を次々と認めた。結果、少子化と相俟って、高校の勉学を疎かにしたばかりではなく、入試の勉強も一切していない大学生が急増したのだ。彼らは大学でも勉強をしないので、就職活動や入社後の会社で総合的教養と専門知識が浅いことを露呈することになった。
そこで、文科省は大学を「最後の砦」と見立てて、色々な角度から大学に学生が勉学に励める環境を作るように言って来ている。恰も、学生が勉学に勤しまないのは教え方が悪い、と言うことだから始末が悪い。勉強はしたくない、大学に勉強をするために来ていない、と言う学生にどのように教えるのだろう。

管理機構が犯した失敗を現場に責任転嫁することが、サッカー界と教育の世界の共通項。サッカークラブ経営者の受難と大学の混乱は当分の間続くだろう。

トラックバック URL : http://blog.nippon-sports.com/wp-trackback.php?p=1125

以下、オリジナル原稿

2020年の夏季五輪招致を目指す5都市がモスクワで招致演説を行った。東京は「安定感とスポーツの持つ力」を訴えたが、残念ながら、東京には招致を妨げる懸念材料が多すぎる。中でも最大の難題は原発事故だ。五輪は世界が注目しており、東京が安全であることを世界から信用して貰う必要がある。しかし、東京周辺から避難した外国人が完全に戻っていない。外国人観光客は激減したまま。そんな環境にも拘わらず、事故の検証も行わずに、原発再稼働に前のめりになる日本を世界が信用するだろうか。聞く所によると、米国と欧州は日本の原発行政を全く信用していないそうだ。2020年の開催だから大丈夫と強調しても、今の情勢では世界から東京での五輪開催の容認を取り付けるのは容易ではない。

加え、野田政権が何かおかしい。直近では、北朝鮮のミサイル発射に対する情報発信の遅れが良い例だ。明らかに米国と韓国の対応とは違った。又しても政府と省庁間の連絡が悪かったし、何回も訓練をした「Jアラート」も機能しなかった。民主党が政権交代前に掲げた「脱官僚」に対する意趣返しが今でも官僚の間で続いているのだろうか。しかし、国難発生から1年が過ぎ、国全体が一丸となって被災地の復旧と復興に取り組むべきにも拘わらず、依然として政府と省庁の間の情報交換が悪いようでは困る。政府が責任を負うべき所が多いが、会議の議事録を取っていないなど本来行うべき業務を無視したり、時に既存の法律を楯に復興の足を引っ張っているように見える官僚も度量が狭い。

民主党政権に代ってから政府発信の情報に対して疑い深くなってしまった。特に、消費税引き上げと原発再稼働については賛成できない。先に結論ありきだからだ。もっとも、政府を信用していないのは私だけではなさそうだ。デパートの食料品売場やスーパーに行くと明明白白。「安全」と表示されていても、過去放射能測定値の高かった地域の農産物や魚介類を手に取る人は極めて少ない。

情報に信用が置けない時は、「噂」が飛び交うことが多い。しかし、そんな時に、真実を把握しているのに報道をしないメディアが多いのも事実のようだ。プロ野球の「裏金」に関る情報もその類と聞いた。
金にまつわる下世話だからだろう。巨人の契約金最高標準額違反についての報道が新聞から雑誌に移った。雑誌は読者の関心が高いとしつこい。彼らは、逆指名制度導入の1993年から契約金の上限を文書化した2007年までの秘密取引を追っているらしい。その内、次々と当時の「噂」が事実として暴露されるだろう。何しろ、新聞社のベテラン記者の多くが噂は昔から知っていたとコメントしているので、雑誌が裏付けを取るのに然程時間は掛らないと思われるからだ。プロ野球界は信用回復の手立てを検討しておいた方が良いかも知れない。

それにしても、日本のプロ野球は新人選手に関る裏金の話が多過ぎる。八百長試合や審判買収が多いイタリアのサッカー界とともに不名誉なことだ。イタリアの八百長は文化であり、審判買収はゲーム感覚だと言う人もいる。それでは、日本の裏金も文化か。とんでもない話だ。しかし、巨人が紳士協定を破っていたと分って気付いたことだが、最近、軽く口約束しておいていとも簡単に反故にする人が多くなった。世の中の風潮だろうか。プロ野球関係者の中にも口約束を実行しない人が意外と多いことを思い出した。だから、約束を守らなかった巨人に他球団が文句を言わないのは、「天に唾する」ことを恐れたのか、他所でした口約束を履行していないから強く出るのを逡巡したのか、いずれかに違いない。

政府、官僚、プロ野球界、そして私も、約束を守るように心掛けることが大事。信用が無ければ、大きな仕事が出来ないからだ。

トラックバック URL : http://blog.nippon-sports.com/wp-trackback.php?p=1112

以下、オリジナル原稿

最近の読売ジャイアンツ(巨人)は矢張り何か変だ。東海大の菅野投手の単独指名狙い、渡邉会長と清武元代表の確執、そして、過去の契約金超過払い報道に対する反応。これら一連の動きはファン離れを起こしてもおかしくない。日本のプロ野球(NPB)の盟主と自他共に認める巨人だが、過去の行動を追って見ると、盟主としてのリーダーシップを時々放棄して、12球団で合意した制度を自分の都合の良いように曲げるのが好きなようだ。巨人は、ドラフトに続いて「育成」制度も本来の趣旨とは異なる方向に進めようとしている。困ったものだ。

育成制度の現状はどうなっているのか。日本ハムファイターズ(日ハム)は育成選手が「ゼロ」に対して、巨人は最多の23名。ソフトバンクホークス(ソフトバンク)が22名を抱えて巨人に続いている。3番目に多いのが広島カープで12名だから、巨人とソフトバンクが突出している。趣旨が違うと感じるのは、選手の数だけではない。入団して5~7年目の選手、酷い所では13年目や20年目の選手を育成枠に入れている球団もある。これでは、育成ではなく、「囲い込み」ではないだろうか。育成選手が増えると、当然、コーチ陣の数も違ってくる。日ハムが監督を含め17名に対し、巨人は29名、ソフトバンクは27名と大世帯だ。
このように「金」が物を言う制度では巨人は必ず中核に位置する。また、選手育成でも、選手補強に対する強気姿勢で「パの巨人軍」と揶揄されるソフトバンクの面目躍如ぶりが目立つ。結果、育成制度でも金満体質の球団とそれ以外との格差が明確になった。誰が考えても、選手の数と戦力は比例する。選手の数が増えると競争がそれ相応に激しくなるからだ。しかも、選手層が厚くなるので、長いペナントレースでは断然有利になる。育成制度の現状は、「戦力の均衡」のみならず、「優勝争い」についても、由々しき問題を含んでいるのだ。

2005年末に導入が決まった育成制度は、業績不振や工場の海外移転などにより所属していた野球部が廃部や活動停止に陥った社会人野球選手を救う手段の一つとして考案された。広島の活動を下敷きに巨人の清武元代表が骨格を固めて実施に移したと言われている。裾野の広い選手育成環境を維持する目的で開始されたが、始って6年経った今、上記に述べた如く、将来に禍根を残すような歪な形に変化している。果して、現状は12球団の総意(少なくとも、全球団の4分の3以上の賛成)を反映しているのだろうか。私は、12球団の共通認識を見出すことができない。いつものことながら、NPBの各球団は制度実施に当って、なぜ、足並が揃わないのだろう。不思議な集団だ。

NPBのバイブルである野球協約は、「球団は、70名を超える選手を支配下選手にすることはできない」とし、一方で、1軍の試合に出場できる登録選手の数を28名以内と定めている。球団間の適正な競争を促すためである。
そのため、全球団が28名の登録選手を1軍、それ以外を2軍と区別して、米国メジャーリーグ(MLB)が採用するMLB球団とマイナーリーグとの区分けに類似した制度を維持してきた。2軍の選手を上手に育てた球団が2軍と1軍の選手競争を促して戦力の整った球団を作り上げてきた。だから、70名の支配下選手の枠外となる育成選手には諸々の制限が付いている。本来なら、リーグ全体のこととして、リーグの管理の下で行うべきことである。

一般的な事例を持ち出すまでもないが、どの企業も会社として目指す理念や使命を定めている。しかしながら、NPBのリーグ運営の理念や使命は何だろう。自由競争の弱肉強食の世界なのか、それとも、戦力均衡の下での共存共栄なのか。現状から判断する限り、良く分らない。
支配下選手を70名と規定したり、ドラフト制度を採用しているので、戦力均衡策を全面的に否定しているわけではないようだが、一方では、一括管理した方が経済的に効率の良い、テレビ・マーチャンダイジング(商品化)・スポンサーシップの権利処理を個々の球団が現金化している。更には、ドラフトは完全ウェーバーではなく、また、フリーエージェント制度とも連動していない。結果、球団の収入と支出の両面とも球団の自由裁量に委ねられている。
経営に思想の軸がないので、大きな声で主張する勢力が時に横紙破りを行うこともありえる。だから、制度が中途半端になりがちなのだ。

ファンから非難を受ける前に、1軍、2軍、育成について、改めてリーグ全体でルールを定めることを勧める。この場合、最も力を注ぐべき所は2軍である。大胆な発想の転換を行い、中間となる2軍の位置づけを変える必要がある。今までの完全なコストセンターからプロフィットセンターに近付けることが大事だ。期限を定めて独立採算方式に改め、同時に、自治体と連携して客席付き球場の改装・建設も進めなければならない。選手育成は独立リーグの活性化と人気化を支援する意味からも、独立リーグとの提携を模索した方が経済的にも制度的にも効率的。当然のことであるが、ドラフトの際は、12球団が平等に育成選手を選べるシステムにしなければならない。

トラックバック URL : http://blog.nippon-sports.com/wp-trackback.php?p=1123

以下、オリジナル原稿

ある新聞がコラムで、読売ジャイアンツ(巨人)の契約金超過払いに関連して「07年以前のことで巨人をとやかく言うつもりはない」と書いていた。過去を不問に付すことに驚いた。寛容なメディアだ。そう言えば、民主党政権は、マニフェストで約束したことを悉く反故にしているが、メディアは大らかだ。どうも、世間一般の風潮として「約束」に対する拘束力が弱まっているような気がする。由々しいことだ。

プロ野球界は、12球団が新人選手の契約金の最高標準額について話し合いを行う際、2007年以前は「申し合わせ」内容を成文化せず、罰則も設けていなかった。このような合意事項を一般的に口約束とか、「紳士協定」と言う。巨人は07年以前の事だからルール違反ではないと主張。それに同調するメディアも少なくない。しかし、実際問題、口約束や紳士協定を破って許されるだろうか。そうではないだろう。如何なる場合も約束違反が正統化されるはずがない。

世の中の取り決めは、成文か不文の2種類に分かれて残る。一般的に、役所や会社などの企業体組織では成文が主流で、個人の間では不文の口約束が大半を占める。我々の日常生活を振り返ると理解しやすい。仲間で約束したことを誰か違反した時、我々は彼または彼女を仲間内から外す措置を取ることが多いのではないだろうか。友人が口約束を破ったらその友人とはその後一切口を利かない例も多い。このように、口約束の場合、違反者に対して仲間内で制裁を課すのが一般的だ。なぜなら、不文で済ます組織体は、多数決ではなく、合意した全員が、所属する組織の理念や使命を共有しそれを基盤に行動を一にすることが多いからだ。そして、その根底には、「組織全体の利益」を守ると同時に、「個々の同意者の利益」もお互いに保護するとの共通認識を保持しているものである。従って、口約束を破ることは組織体の基本的思想に対する謀反を意味する。だから、違反者は組織から放逐されることで制裁を受けるのが一般的。そうでなければ、全員で取り決めをした意味がない。また、守られない取り決めはしない方が良い。

プロ野球の組織は、baseball operation(野球運営)とbusiness operation(営業)の2部門から成る。グランドの上の出来事は野球運営の範疇に入り、当事者全員が共通のルールの下で運営される。一方、営業は独立した行動が許されると同時に、全体の利益のために組織の規則に縛られることも少なくない。特に、リーグ全体と個別球団が組織を継続しその上で一定の利益を確保したいとの共通認識を保有する場合、各球団はリーグの指導の下で、成文と不文を問わず、規則または約束事を決めてお互いが遵守することを求めあうことになる。組織に加わる全員に確たる共通認識がないと紳士協定の遵守は難しい。だからこそ、紳士協定に参加した人や組織には、自己管理または自制が必要であることは言うまでもない。

以上を踏まえて契約金超過払いの問題に戻ると、不可解なことに気付く。その1つが、巨人の申し合わせ違反報道を知った11球団が、巨人に対して怒らなかったし、抗議の声も出さなかったことだ。2つ目は、12球団を束ねるコミッショナー事務局が事実関係の確認作業をしなかったことだ。紳士協定が破られても何とも思わない野球界は不思議な世界だ。だが反面、このことは、プロ野球界の12球団が経営理念を共有する集団ではなく、個々が全く別のことを考える烏合の衆の集まりなのかも知れない。そう考えれば、鶴の一声や部下の反乱は理念が共有されていないことから起る自然現象と思えないではない。

元来、紳士協定ほど厳しいルールはない。その紳士協定が守れない組織は自然に崩壊し、存続できないのが普通だ。恐ろしい推察だが、もしかしたら、プロ野球界は法律とビジネスの両面で既に一部の機能が壊れている可能性がある。

トラックバック URL : http://blog.nippon-sports.com/wp-trackback.php?p=1109

以下、オリジナル原稿

米国メジャーリーグ(MLB)のバド・セリグコミッショナーの任期が2014年末まで延長され、年俸も2,200万ドル(約19億円)に引き上げられた。日本のプロ野球(NPB)では想像もつかない金額だ。日米のコミッショナーの年俸格差は選手間のそれどころの話ではない。
3月15日から25日までロンドンに滞在した。その間にプレミアリーグの経営者と意見交換をした。英国に居てMLBのコミッショナーについて議論をするのは少し変な感じだが、リーグ経営の根幹に触れることだけに、皆がリーグトップのリーダーシップに関する英米比較を真面目に語ってくれた。

承知の通り、イングランドはサッカー発祥の地。同時にアマチュアリズムを生んだ土地でもある。1863年に世界に先駆けてサッカー協会が設立され、1888年にはプロリーグが発足した。その時、英国のプロ組織はアマチュア団体である協会の傘下に留まることを決心する。これで、プロ組織でありながら「金儲け」の匂が大きく消えた。米国との違いがここから始る。

金儲けに徹することのできないクラブは当然貧乏。テレビが家庭に普及してもテレビ局が公共放送だったので、権利料収入に依存できない期間が1990年頃まで続いた。しかも、昇格・降格の制度があるので、順位に左右されない地元住民の熱烈な支援が唯一の助け船。加え、英国を含む欧州全体が有史以来隣接する国や街と戦争を行いお互いが略奪を重ねてきたので、各地域及びクラブが独立を好む傾向が極めて強い。かかる環境だから、クラブ創立以来、クラブと地域及びその住民との結び付きが強固に保たれてきた。中央集権的コミッショナー制度は歴史的及び文化的立場から英国を含む欧州の好みではないのだ。[だから、スポーツ経営では、欧州と米国の歴史・文化・芸術も学習する必要がある]

それでは、プレミアリーグ全体の統治はどうなっているのだろうか。もちろん、全体を管理する事務局が存在する。但し、米国のコミッショナー事務局と異なり、プレミアの事務局は重要な懸案事項や突然起こった問題を独善的に収束または解決する権限を有していない。リーグの重要案件は20のクラブの代表が決めることになっている。しかも、4分の3(即ち15名)以上が賛成しないと同意事項にならない。独立性の強い20のクラブがそれぞれ地元の歴史と文化を背負っているので、4分の3の賛成取得は非常に難しい。合理性を最優先する癖の付いたア―セナルを運営する米国出身の経営者は、ビジネスよりも歴史や文化を優先するプレミア流のやり方にもどかしさを感じるのを禁じえない様子だった。
ここまでの記述で読者の皆さんは、NPBの統治の実態が英国のプレミアに類似していることにお気付きではないだろうか。違いは、各クラブが保有する1票の重みのようだ。プレミアでは、強豪のマンチェスター・ユナイテッドも昇格・降格常連の弱小クラブも同じ1票なのに、NPBの球団が保有する1票は重さが異なるようだ。時に、ある球団の1票が12球団の意思を表すことも有り得るからだ。
制度設計も日本は分り辛い。NPBはその発足以来、MLBの制度を導入してきた。しかしながら、今日まで一貫して都合の良い所の撮み食いと都合の悪い所の削除を行ってきたために、導入された制度はMLBのものとは似て非なるものになってしまった。完全ウェーバーではないドラフト制やドラフトと連動しないフリーエージェント制、等が良い例だ。

もう1つ重要なことがある。八百長の多いイタリアは例外だが、欧米のプロリーグと比較して、NPBの最大の汚点であり弱点は「後ろめたい金」の話が多すぎることだ。特に、ドラフトに絡むスキャンダルめいた話は綿々と形を変えて続いている。そのため、高校や大学の関係者との接触が厳しく制限されており、学生のみならず引退したプロ選手たちに不都合な状況が一向に改善されない。残念なことだ。

後ろめたい金を根絶することは決して難しくない。欧米のプロリーグが行っているように、また、Jリーグが実施しているように、NPB12球団が財務諸表をコミッショナー事務局に提出すれば良いのだ。事務局は財務内容を一般はもとより他球団にも公開する必要はない。全球団の財務状況を把握しておれば、不審な金の出し入れがあった場合に容易に見つけることができ、改善要求もできるからだ。この措置が裏金の発生を阻止してくれる。

NPBのコミッショナーは、最近特に、影が薄い。WBCの日米交渉、サムライジャパンの商標、長野・澤村・菅野と続きかねなかったドラフト単独指名、巨人の内紛や過去の契約金超過払い、等々、NPBの利益や制度に深く関る事柄に対してコミッショナーがリーダーシップを発揮して解決に当る様子が全く見受けられない。
組織の頂点に立つ人が、問題が生じる度に傍観の態度では駄目だ。過去のことだからと言って新人選手に対する契約金超過払いを放置していてはいけない。放置すれば、次から次に新しい暴露話が出てきて、NPBのイメージを損なうからだ。今を良い機会と捉え、12球団に1997年から2011年までの財務諸表を提出させるべきだ。数字が分れば対処策も講じることができるので、早い方が良い。まさか反対する球団はないはず。反対すれば「後ろめたい」球団のレッテルを貼られることと同意義だからだ。もちろん、財務内容の非公開を約束しなければならない。

NPBのイメージ悪化を止めるには、コミッショナーのやる気が不可欠。それができれば、存在感を多少取り戻せるだろう。

トラックバック URL : http://blog.nippon-sports.com/wp-trackback.php?p=1114

以下、オリジナル原稿

海外を旅行すると、日本ではさほど重要と思われていないことが現地では深刻に議論されていたり、日本で見過ごしていることを関係者との意見交換を通じて再発見することが多い。今回、ロンドンでスペインのサッカーリーグの将来を危惧する話を数回聞いた。そして、それは日本のプロ野球にも相通じることでもあった。

各国のサッカーリーグ戦は、基本的に「自由競争」の下で行われている。欧州の5大国のトップリーグも同じ構造だ。だが、昨今米国の影響を受ける国も出てきて、例えば、イングランドとドイツはテレビ放送権をリーグで一括管理するようになった。唯、欧州の各都市や市民が個々に歴史・伝統・文化を固持するように、各クラブは独立を好む傾向が強い。権利の現金化においても、テレビ放送権以外の商品化とスポンサーシップの権利は未だ一括管理に踏み切っていない。クラブが権利の現金化をリーグに委ねようとしないからだ。欧州のクラブからすると、これが金権主義の米国と異なる所だ、と言うことになる。
そんな中、スペインのサッカーリーグは徹底している。権利処理から選手獲得に至るまで個別クラブに制約を設けていない。正に、17のルール以外はクラブの自由裁量なのだ。その結果、リーグ内はもちろんのこと世界規模でも圧倒的な強さを誇るレアル・マドリードとバルセロナを生み出した。スペインでは歴史的にこの2強と他のクラブとの間に歴然とした戦力の格差があったが、近年、2強が世界の人気クラブになってその差が更に拡大した。最早、スペイン国内でこの2強にまともに戦って勝ちを得るクラブが無くなった。そのため、身内である他のクラブの首脳からも2強は強過ぎるとの非難が出始めた。だが、マドリードとバルセロナは、経営努力のお陰で世界市場からお金が集まり、その金で優秀な選手を揃えているに過ぎない、と反論するだろう。

国代表が2010年のワールドカップを制し、クラブの実質的世界一を競う欧州チャンピオンズリーグ(CL)でも優勝争いの先頭に立つスペインの2強。スペインは絶好調と思っていたら、世界は別の見方をしていた。CLでマドリードとバルセロナを負かすのは容易な事ではないとの認識で一致しているイングランドのクラブ関係者もスペインは「異質」と断じていた。そこには、常勝の2強対他のクラブに明確に色分けされたリーグ戦のどこが面白いのだろうか、との疑問も含まれているのだ。

日本のプロ野球(NPB)は「戦力の均衡」を経営の柱に置く米国メジャーリーグの仕組みを一貫して取り入れてきた。所が、企業が球団の親会社となって親会社の都合を球団に押し付けたために、導入した制度を悉く骨抜きにしたり形を変えることで、実態を「自由競争」と同じにしてしまった。リーグ全体を統括すべきコミッショナーが権限を保有していないことやテレビ・商品化・スポンサーシップを一括管理していないことが如実な証だ。

現状では戦力が均衡していると言えないNPB。しかし、語弊があるかも知れないが、欧米と異なり各球団の経営者が「スポーツ経営」の専門家によって構成されていないのが幸いしているようだ。「選手年俸総額:戦力=1:1」の方程式が成績に反映されていない。戦力補強(金銭の投入)が必ずしもリーグ優勝に結び付いていないし、クライマックス・シリーズで番狂わせが起ることも多くなった。
だが、プロリーグの経営の要諦が「戦力の均衡」であることを忘れてはいけない。NPBも例外ではない。どの試合も観客で満杯にするには拮抗した戦力の下で手に汗する展開を演じなければならない。この点から考えると、スペインのサッカーファンがレアル・マドリードとバルセロナが他のクラブを寄せ付けないリーグ戦に決して満足していないと予想される。NPBはスペイン化だけは避けなければならない。

トラックバック URL : http://blog.nippon-sports.com/wp-trackback.php?p=1099

以下、オリジナル原稿

3月の28日と29日に米国メジャーリーグ(MLB)の公式戦開幕シリーズが東京ドームで行われた。MLBチームの来日は4年ぶり。しかも、今回はシアトル・マリナーズの訪日だから、イチロー選手の「凱旋興行」と目され、チケットの最高額が18,000円であるにも拘わらず、両日で9万人に近い野球ファンが東京ドームに駆け付けた。マーチャンダイジングの商品も飛ぶように売れ、特にイチロー選手のユニフォームのレプリカはあっと言う間に完売したとテレビで報じていた。
今年の開幕シリーズが大成功だったので、世界市場への進出を推し進めるMLBはさぞかし満足のことだろう。日本のファンも大喜びだった。この成功を梃子に、日本は言うに及ばず、MLBの中国や韓国などへのアジア向け攻勢が更に強まるだろう。一方の日本のプロ野球(NPB)はMLBの成功を手放しで喜ぶ立場にない。喜ぶようであれば、単なるお人好しに過ぎない。逆に、NPBが世界戦略を全く持ち合せていないことがあからさまに露呈した。スポーツを含むエンターテイメント関連ビジネスが「内弁慶」では困る。

プロスポーツの海外進出について言及する。ヨーロッパのサッカーは米国のプロリーグと別の道を選んだ。サッカーの場合、ワールドカップやチャンピオンズ・リーグの開催が示すように世界市場への普及や浸透の役割は国際サッカー連盟(FIFA)と大陸毎の連盟が担っている。従い、各国のプロリーグは国内のリーグ戦に専念すれば良いことになっている。だから、この仕組みの下では、各国のリーグとクラブが独自に海外で興行を行う時には大きな制約を受ける。事実上、公式戦を他の国で実施することは難しい。
米国のプロリーグは、世界最大のスポーツ市場である自国内でビジネスを展開できるので海外に敢えて進出する必要性を感じることはなかった。その米国が世界に目を転じるようになったのは1980年代後半。切っ掛けはバスケットボールだった。バスケは米国で生まれた。言わば米国の国技。所が、オリンピックで米国の代表チームは当時の社会主義国が養成するステート・アスリートから成るチームに勝つことができなかった。打開策はプロの参加、即ち、プロバスケ(NBA)選手のオリンピック出場だった。そこで、デビッド・スターンコミッショナーが登場する。彼は、米国のため、そしてNBAのために戦略を練り、実行に移した。戦略の柱は、(1)1990年の東京での公式戦開幕試合(2)1992年のバルセロナオリンピックでのNBA選手から成る米国代表チーム、所謂「ドリームチーム」の組成、だった。
東京での開幕試合を日本だけではなく世界のメディアが注目した。また、バルセロナでの米国代表チームの文句なしの優勝はNBAの名前を世界中に広めた。NBAの成功は他のプロリーグに刺激を与え、彼らも一斉に世界市場に乗り出すことになった。その時、日本が進出先になった。当時、日本は国内総生産が世界第2位であり、プロ野球があるから当然のことと考えられた。MLBとアイスホッケーのNHLがNBAに次いで日本で公式戦を開催し、アメフトのNFLも非公式戦を行った。

米国大陸がフロンティアを求めて東部から西部に向かって開拓が進んだように、米国のプロリーグは、これまでそうであったように、そしてこれからも、世界戦略を次のような形で進めるだろう。
(1)日本に橋頭堡を築いた後に、中国やインドを含めたアジアに浸透
(2)日本同様、英国を軸に、欧州とアフリカへの進出
(3)カリブ海諸国を傘下に収め、ブラジルを中心に南アメリカ大陸の足場確立

だが、世界市場への進出には、その前に進出を容易に進めるための準備が必要である。その準備には、試合興行に加え増収に寄与するテレビ・商品化・スポンサーシップの一括管理業務の確立と、試合興行のリスクを引き受けてくれるパートナー選定が含まれる。海外での権利処理の場合、試合開催は主役ではない。なぜなら、本来、試合はフランチャイズで行うものであり、海外で試合数を増やすことは最も重要なフランチャイズ区域のファンを失いかねないからだ。従って、海外の試合数は限定的となり、海外での主役はテレビ・商品化・マーチャンダイジングの現金化となる。そのため、公式戦開催は権利の販売プロモーションツールに徹することが重要になる。

このことをNPBにあてはめてみると、NPBの現状が明白になる。権利の一括管理を行っていないので、海外での権利処理ができない。知的財産権の現金化では大きな欠陥だ。そのため、NPBの代表もしくはチームが海外で試合を行ってもビジネスの観点からは意味のないものになってしまう。ワールド・ベースボール・クラシックで優勝してもNPBに海外からの収入が全くなかったことが立派な証である。

米国のプロリーグも海外進出が順風満帆とは言えなかった。例えば、NFLはパートナーと組まずに単独で欧州にリーグを作ったが失敗した。日本でもパートナーが費用負担に耐えられずに撤退し、試合開催が途切れた。試合開催の引き受け手がいなくなったNBAとNHLも公式戦を10年以上も日本で行っていない。海外で足場を固めるには、1~2年の短期間では無理。これこそ、「継続は力なり」なのだ。まして、公式戦を行う本格的市場開拓となれば、資金を潤沢に持っていてリスクを取ってくれるパートナーが不可欠なのだ。その点から推測すると、MLBが言うほど簡単ではないだろう。MLBが目論む中国やその他の東南アジアでの公式戦開催は相当ハードルが高いと予想する。とは言え、開拓精神の旺盛な米国のプロリーグだから、諸々の策を講じて世界市場のフロンティアを拡げるに違いない。現に、NBAは着々と中国とブラジルに布石を打っている。

かかる環境にも拘わらず、日本では前回のMLB来日同様今回もNPB球団の親会社がMLBのパートナーとなりリスクを負って開幕シリーズを主催した。奇妙なことだ。元々、グランドの外のビジネスではMLBはNPBの競争相手のはず。そんな関係でありながら、MLBの公式戦を日本に招聘することは、例えば、メーカーが自社商品を並べるスーパーやコンビニの棚を競争相手の同業他社に明け渡すようなものだ。MLBに9万人の観客を取られたら、NPBは同数を失うリスクが生じる。MLBの試合が地上波のテレビ局によって全国放送され、マーチャンダイジング商品が売れ、試合に多くのスポンサーが付いた。その分、NPBの地上波テレビ放送が減少し、商品化やスポンサーシップからの収入が減る可能性が高くなる。経済効果とは誰かの収入減少で生まれるものなのだ。

野球ファンはMLBの試合を楽しんでくれた。しかし、残念なことだが、「スポーツ経営」の視点から敢えてコメントするとすれば、NPBのコミッショナーと12球団のオーナーがMLBの日本開催について全然深刻に考えていないことに落胆すると共に海外進出について全体のコンセンサスが形成されていないことに失望せざるを得ない。猛省を促したい。

トラックバック URL : http://blog.nippon-sports.com/wp-trackback.php?p=1116

以下、オリジナル原稿

残り10試合を切った2011-12年シーズンのプレミア・リーグ。リーグの優勝争いはマンチェスターのUnitedとCityに絞られたが、リーグの上位4クラブに与えられるUEFA(欧州サッカー連盟)主催のチャンピオンズ・リーグ参加資格(上位3クラブは自動的、4位は他リーグのクラブに勝つことが条件)獲得は熾烈を極める状態になっている。3月22日現在の順位は、1位マンチェスター・U、2位マンチェスター・C、3位アーセナル、4位トッテナム、5位チェルシー、6位ニューカッスル。マンチェスター勢のチャンピオンズ・リーグ進出はほぼ確実だから、ロンドン住民の関心は3位争い。新聞各紙は、残り2つの椅子を巡って争うロンドン在のアーセナル・トッテナム・チェルシーの今後の対戦相手と勝敗予想を連日書き捲っている。
下位の3クラブが自動的に降格する下位争いも激しい。同様22日現在の順位は20位ウォルブス、19位ウィルガン、18位ボルトン、17位QPR(Queens Park Rangers)、16位ブラックバーン。団子状態なので、試合ごとに順位が変わる。
上位も下位も目が離せない。

そんな状況の中、3月19日(月)にQPRのCEO(社長)と財務担当責任者と面談した。QPRは今季初めてプレミアに昇格。クラブのスタジアムはLoftus Road、1882年の建設だから130年の歴史を持つ。収容人員は約2万人。プレミアのスタジアムとして最小の部類に入る。

サッカーの組織構造は世界共通。権利を現金化する仕組みは個々の国によって若干の違いがあるものの、米国系のプロリーグで採用されるドラフト、収入の再配分(Revenue Sharing)、選手年俸を規制するサラリーキャップ(もしくは課徴金制度)の類はないに等しい。そのため各クラブは、(1)自ら若い選手を育成(英国では「アカデミー」方式と呼んでいる)し、(2)金の力で選手を揃えている。しかし、このことは結局、「金」のあるクラブが若手選手の育成に力を入れることもできるし、選手獲得にも有利な環境を作り出せることを意味する。基本的には、選手の能力と彼に対するクラブ間の需要は比例するし、同時に彼の年俸も比例する。

ビジネスの構造も国によって異なる。英国のクラブの多くは19世紀末から20世紀初めにかけて設立され、同時にスタジアムも建設された。その伝統は今でも現存する。所謂、全てのクラブでスタジアムとの経営の一体化が行われているのだ。
テレビ放送権利料の配分も各クラブが一律平等に受け取るシステムではない。テレビが家庭に普及する前は兎も角、普及後も欧州のテレビは公共放送だったので、放送権利料からの収入には限界があった。放送権利料収入の飛躍的増大は、プレミア・リーグ開始時に有料衛星放送が契約に介入してから実現した。プレミア・リーグの場合、放送権はリーグが一括管理している。収入の配分は(1)全クラブ同額部分(2)放送回数に応じた比例部分、の2つに分類される。

QPRは、他の有力クラブと比較すると(1)スタジアムの規模が小さいのでチケット収入が少ない(2)強豪に比肩するだけの戦力がないので放送回数も少ない、ために収入面で劣勢にならざるを得ない。しかも、降格の可能性もあるので、積極的な経営姿勢を打ち出せない。スタジアムの拡張にも二の足を踏むことになるし、能力の高い選手を金の力で獲得することにも躊躇することになる。

プレミア・リーグに限らず、欧州でプレーする選手たちは所属するクラブに忠誠心を持たないのが一般的。彼らは「金」を求めて移動する。彼らはエージェントの力を借りて「能力」をクラブに売り込むのに余念がない。QPRが2部に降格しても、選手の多くは昇格してくるクラブに移籍できる。QPRのようなクラブの経営者は選手に「やる気」を継続的に持たせることも必要になる。

この点から考えると、強豪クラブの経営者も難しい運営を強いられるが、降格ギリギリのクラブの経営者の方が精神的に強靭でなければやっておれないような気がしてくる。

トラックバック URL : http://blog.nippon-sports.com/wp-trackback.php?p=1096

3月25日(日)の午前1時に全国一斉に1時間早送りになり、午前2時になった。この時間からイギリスはサマータイムに変更された。イギリス人は誰もがこの時間変更を知っていたようだが、私はホテルからの1枚の通知書で知った。新聞やテレビでサマータイムへの切り替えを周知徹底する様子もなかった。だが、朝起きてみると、ホテル内外では全てのことが昨日よりも1時間早く何事もなかったかの如く、行われていた。
ホテルの朝食やチェックアウト、それにデパートの開店時間や飛行機の出発に至るまでサマータイム。遅れるのが日常化していると言われる空港行き電車も定刻通り。イギリス全体では分らないが、身の周りではサマータイムが理由でトラブルが起きたとは聞かなかった。サマータイム切り換えはそれほど簡単な作業なのかも知れない。

実は、5年間住んだことのある米国でもサマータイムを経験している。春休みに入る時にサマータイムに入り、夏休みが終る時にサマータイムが終了する。切り換え時に1時間損をし、終了時に1時間得をした気分になったものだ。サマータイムに適応するために、目ざまし時計を1時間早くしたり、遅くしたりするので、最初は時差に近い感じがするが、直ぐに慣れてしまう。

我々は会議をしている時、反対派や現状維持派から「時期尚早」の言葉を聞くことが多い。彼らにとって、時期尚早とは今は出来ないとのメッセージだが、彼らはいつになっても時期尚早と言って先送りするので、時期尚早が永久に着手しないことと同意義になってしまう。諸先輩を見ると良く分る。時期尚早を唱える人は、結局、会社や社会に何も貢献しないで、単なる反対屋で人生の大半を過ごしてしまっている。実行力や困難に立ち向かう突破力がないのだ。

イギリス人が当然の如く、また、国全体が4つの時間帯に区分され東部と西部の間に3時間の時差がある米国でさえ、サマータイムを導入している。そんな例があるにも拘わらず、夏の電力不足をメディアを使って警告すると同時に企業や国民に節電を呼び掛ける日本政府が、なぜかサマータイム導入に消極的なのが解せない。生真面目で全てに正確を期する日本人が「サマータイム」導入を行えない理由が見つからない。

どうも、民主党政権は「サマータイム」に関する限り「時期尚早」派の集まりのようだ。こんな簡単なことも実施できない。こんなことだから、自分たちで決めたマニフェストを何一つ実現出来ないし、統治能力を疑われることにもなってしまう。

もしも、電力不足の心配を煽って停止中の原子力発電の再稼働を実現するために、サマータイム導入が無視されるのであれば、余りに姑息な判断である。且つ又、国益に反する行為と言わざるを得ない。

サマータイムは企業や自治体が個別に導入しても効果が少ない。全国一斉に行わないと期待する効果が表れない。だから、国が国民の立場で判断すべきである。今年の夏でも「時期尚早」では、永久にサマータイムは実現しない。

トラックバック URL : http://blog.nippon-sports.com/wp-trackback.php?p=1105