プロフィールにあるように、私は1970年入社組。会社の同期は204名。当然、入社後に歩いた道は全員異なる。私のように早期退職勧奨を受け入れたり、海外駐在中に不慮の災難にあったり、途中で所在不明になったり、家庭の事情で退社を余儀なくされたり、等々の理由で定年前に会社を辞めた仲間も多い。一方で、第1次定年の60歳時に、年収は大幅に減少するものの4年間の定年延長を選択した仲間もいた。延長組の多くは職務中に培った専門的知識が深く、余人をもって代えがたい特殊な才能を持っていた。だから、会社に残る選択をしたのだが、今年の3月末全員退き、遂に本社で働く同期がゼロになった。
定年の規定がなく、会社が必要とするか否かの判断が年齢では無く知識と才能であれば、彼らはもう数年は会社に貢献できたであろう。だが、才能よりも年齢を優先するのがサラリーマンの社会なのだ。
サラリーマンと違って、プロスポーツ選手の引き際は難しい。特にチームに多大な貢献をした選手ほど、「引退」を球団の勧めでは無く、自分自身で決断しなければならない。球団に長く在籍した選手の引退にはルールが有るようで無いからだ。今シーズン末も自分で決断を下さなければならない選手が数多く居てもおかしくない。そんな状況下で、驚くべき記録を打ち立てたベテラン投手が日米に表れた。
4月15日、プロ29年目46歳8カ月になる中日ドラゴンズの山本昌投手が先発勝利を挙げ、最年長記録を達成したのだ。同期が現役を退いて、やや意気消沈していた私に山本投手は元気をくれた。2日後の17日、更に元気の出る記録が生まれた。米国メジャーリーグ(MLB)のコロラド・ロッキーズのジェミー・モイヤー投手が49歳4カ月で勝利投手になってMLB歴代最年長の記録を樹立した。才能と気力があれば年齢に関係なく勝利投手になれることを2人の投手は証明したのだ。
しかし、一方で、2人は引き際がより一層難しくなったと予想する。経営的視点から山本投手の立場と判断基準を考察してみる。
彼の09年(26年目)成績は、6回登板して1勝4敗、推定年俸が1.5億円。1勝当りコストは1.5憶円。普通の会社であれば「無駄使い」と糾弾されるであろう。10年(27年目)は8回登板して5勝1敗、推定年俸が1.2憶円。1勝当りコストは2,400万円。先発ローテーションから外れ、本人も球団も「引退」を意識せざるを得ない状況だったに違いない。しかし、5勝が現役続行に繋がった。11年(28年目)は登板機会なし。推定年俸1.0億円。彼はこのままでは辞められないとの思いが強かったと推察される。そして、12年(29年目)4月に勝利。12年の推定年俸が4,000万円。この1勝のコストは昨年分を加え、当面1.4億円。
山本投手が今シーズンこれから何勝するか分らないが、少なくとも5~6勝しないと、1勝当りコストが高く球団の立場からすれば採算が悪いことは否めない。ドラゴンズ生え抜きの選手である彼は、引退後いつかは指導者としてドラゴンズのユニフォームを着ることを夢描いているに違いない。球団もそのような計画を持っており、だからこそ、長年に亘る貢献を考慮して「戦力外通告」を彼に出すことを逡巡してきたと思われる。要は、「引退」は彼次第の状況と言うことになる。だから、難しいのだ。最年長記録達成が花道になるのか、それとも、現役続行に固執するのか、興味深い。
斯く言う私も9月で65歳。今年は大事且つ重要な節目の年と考えている。だから、昔の同僚(今も仲間だが)やベテラン選手の去就が一際気になる。今シーズンは始まったばかり。山本投手とモイヤー投手には勝利数を重ねて欲しい。私と同じような心境の団塊世代に刺激を与えてくれたら有難い。










