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以下、オリジナル原稿

明治維新(1868年)を遂げた後、日本が近代国家を目指して米欧の先進国に追い付つかんとする当時の日本人の生き様を愛媛県松山出身の3人の若者を通して描いた司馬遼太郎原作の「坂の上の雲」のテレビドラマが2009年末から3年を跨いで年末に放送されて完結した。最後の大舞台は日露戦争(1904~05年)だった。
経済学者ピーター・ドラッガーによると、1900年前後の世界は、英国など少数の工業化が進んだ先進国を除き、殆どの国の大半の人々は農家で働いていたし、商店も家族経営だった。ドラマの中で、先進国の英国や米国の活気あふれる街が現れる一方で、日本は世界の大概の国同様に貧乏で、人々は質素な暮らしをしていた。幸いな事に、国民は楽天的で希望があった。彼らはあたかも雲を目指して坂を登れば幸せを得ることが出来ると信じていたようだった。だが、世界は帝国主義の時代。国が成長する過程で大国のロシアと満州で衝突し、戦争になった。

日露戦争と時を同じくして、スポーツでは1903年と1904年は極めて重要な節目の年となった。米国でプロ野球のナショナルリーグとアメリカンリーグが統合してメジャーリーグ(MLB)が1903年に誕生した。この時期に、2リーグに分かれてリーグ内の優勝争いを行い、その後2リーグの優勝チームによってその年の頂点を極めるワールドシリーズと呼ばれる最終戦が行われるシステムが構築され、現在に引き継がれている。欧州では1904年に仏国の呼び掛けで国際サッカー連盟(FIFA)が創立され、サッカーが欧州を中心に世界中で国民的スポーツとして普及・人気化する礎ができた。

もちろん、当時の日本人は野球とサッカーを国民的娯楽として受け入れるだけの経済的余裕がない。国はスポーツ後進国であった。その後、国、産業界、スポーツ界が米国や欧州に肩を並べるべく精進を重ねるのだが、スポーツだけは「アマチュアリズム」や「教育の一環」に惑わされてスポーツを経済や経営の視点で捉えることがなく、米国や欧州に遅れたまま放置された。

前回のコラムで書いたことだが、スポーツ産業拡大のために今一度書くことにする。権利保有団体が獲得した収入の約6倍がスポーツ関連消費額との統計的仮説に従うとすれば、現在、米国の場合、メジャーやマイナーなど諸々のプロリーグと大学が稼ぐ収入は約4兆円。消費規模は24~25兆円に達する。
欧州の場合、欧州サッカー連盟とその傘下全リーグの収入が約1.6兆円。他のスポーツの収入を加味すると、欧州のスポーツ関連消費額は14~15兆円になると推察できる。
日本は、野球・サッカー・バスケットボールのプロ組織の収入が約2,000億円。それにゴルフなどのスポーツを加えても消費規模は2兆円程度の金額に留まる。国内総生産が世界の中で第3位であることを勘案すると、日本のスポーツ界は余りにも貧弱な経済状況であると言えなくもない。

日本の経済が20年以上に亘って低迷する中、円高によって産業の空洞化がより早いスピードで進み、歩調を合わせる如く、大学卒業生の就職難が深刻化している。今、新卒学生やキャリアアップを希望する社会人の雇用増加を生み出せる潜在的可能性を持つのはスポーツ界以外見当たらない。収入が増えると雇用が増えるのが道理。現実に、収入が増加しているプロ野球のパ・リーグの球団の中から新卒と中途の採用の動きがでてきている。

今こそ、明治期の「坂の上の雲」の如く、国民全体が楽天的希望を持ってスポーツ界の規模拡大と消費金額増加に力を注ぐ時ではないだろうか。スポーツは「コンクリートから人へ」転換すべき公共事業のあり方をも示唆してくれるに違いない。そして、適度な「する」スポーツは健康を促進するので、国民の医療費と介護費の負担軽減に繋がることも忘れてはいけない。

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以下、オリジナル原稿

日本女子サッカー代表(なでしこジャパン)主将の澤穂希選手が女子世界最優秀選手に選ばれた。佐々木則夫氏も女子の世界最優秀監督に選出され、共に男女を通じてアジア初の快挙となった。
昨年の女子ワールドカップ(W杯)でなでしこジャパンが優勝したことが切っ掛けとなって、今まで知名度が低かった「なでしこリーグ」に注目が集まり、観戦客が大きく増加するばかりでなく、報道によると、子供たちの女子サッカークラブへの参加がW杯優勝の後に20%増えたそうだ。そして、澤選手の受賞。女子サッカーへの関心がより一層高まり、今年夏のロンドンオリンピックまでなでしこジャパンへのフィーバーと女子サッカーブームが続くと予想される。それに併せ、女子のサッカー登録者数が大幅に増えるのは間違いない。

実は、女子サッカーの登録者数は少ない。笹川スポーツ財団の最新のスポーツ白書によれば、男子の登録者が852,233人に対し、女子は36,683人。バレーボールの308,936人やソフトテニスの228,315人と比較しても、その数の少なさが目立つ。要は、女子のサッカーがW杯優勝以前は、全く人気がなかったことを端的に数字が示している。
サッカー不毛と言われる米国では違った現象が見られる。日本サッカー協会によれば、米国の女子サッカー人口は800万人。女子の競技人口は167万人だそうだ。筆者はコロラド州デンバーに住んだことがある。そこで実感したことだが、息子のサッカーの試合を応援に行くと、野原に多数のサッカーグランドがあって、そこで男子チームとほぼ同数の女子チームが試合をしていた米国のサッカーの裾野は意外と大きい。サッカーに馴染みがないと言われた米国人もやっとプロサッカーのMLSを受け入れ始めたようだ。スポーツ専門誌が、MLSの人気が2015年頃にはバスケットのNBAとアイスホッケーのNHLを追い抜く可能性が高いと報じていた。米国に比べると、日本のサッカーの裾野は依然として小さい。特に女子は小さい。だが、見方を変えると、日本の女子サッカーは競技人口増加の潜在的成長の可能性を秘めていると言える。

一般論で言うと、女の子があることに興味を持つと男の子がその後を追うことが多い。なでしこジャパンと澤選手によって女子のサッカー人口が増えると、必然的に、男子の人口も増えることになるだろう。大学生や高校生に接すると実感できると思うが、若年層のサッカーに対する関心と興味は野球よりも遥かに高い。このことは、野球、取分けプロ野球(NPB)が手を拱いていると近い将来観客動員力の低下に悩むことになりかねない。今の女子サッカーブームはNPBとって1993年Jリーグ開幕前後と同様の危機を感じても決しておかしくない状況と考える。
Jリーグ開幕時にサッカーの大フィーバーが起った時、NPB、特に読売ジャイアンツ(巨人)が危機感を顕にし、プロ野球界切っての人気者である長嶋茂雄氏を監督に戻してNPBの人気低下を最小限に防いだ。だが、今、NPBは長嶋氏に匹敵する切り札を持っていない。果して、NPBはどんな策を講じるのだろうか、興味深い。

第3者の立場でNPBのために対抗策を考えるとするならば、ファン(=顧客)が喜ぶことを選択するのが上策。ファンが喜ぶこととは、試合が面白いことである。試合が手に汗する展開を繰り広げ、興奮と感動をファンに与えることだが、この状態を作り出すには対戦する2チームの戦力が拮抗していなければならない。即ち、「戦力の均衡」を推進することがサッカーブームへの対抗策である。戦力の均衡は「球団収入の均等化」と「球団支出の平準化」によって実現に近付くことになる。
球団収入の均等化とは、全国市場から収入を得ることができるテレビ放送、グッズ商品化(=マーチャンダイジング)、スポンサーシップの権利の現金化を1人の人物、例えば、コミッショナーに委ねて、彼が得た収入を全球団で均等に配分することを意味する。球団支出の平準化とは、球団の選手全員に支払う総年俸額に上限を設ける「サラリーキャップ」や選手年俸総額を払い過ぎた球団に罰金を科す「課徴金制度」の導入によって、全球団の選手年俸総額が極力同じレベルになるようにすることを言う。

戦力の均衡によってどのチーム同士の対戦も面白いとなれば、自ずと、ファンの試合選択の幅が広がると同時に、個人当りの観戦回数が増えるのは確実。
幸いと言えば誤解を与えるかも知れないが、巨人が牽引するチケットとテレビ放送からの収入に依存する現行の権利処理モデルは既にビジネスとして成立しない状態だから、セ・リーグの球団は巨人と阪神を除いて赤字体質になってしまった。巨人でも将来赤字に陥りかねない。パ・リーグ球団も現行のシステムを継続する限り黒字の幅を更に大きくすることは出来ない。
黒字化、及び、増収への道は、全国市場で処理すべき権利の一括管理を行い、権利を組み合わせて相乗効果を計ることであることは、米国のプロリーグや英国のプレミアリーグで実証済。最早、親会社の利益を最優先して球団経営を行うことに対してファンの共感を得ることは難しい。球団と球場を「文化的公共財」と位置付けて、出資者である親会社と球団とは「スポンサー契約」で結ばれている関係にすべきである。もっと具体的に言うと、球団名から親会社の名前を削除し、ユニフォームに親会社の名前を付することにすればスポンサー契約が成立する。戦力の均衡によって面白い試合が増えれば必ず全国向けのテレビ生中継も増えるので、それで十分に親会社の広告宣伝効果が期待できる。

出来るだけ早く、オーナー会議が「戦力の均衡」策を決議することを望む。これが日本のスポーツ産業を拡大する王道であるから。

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以下、オリジナル原稿

読者の皆さんは、2004年9月18日と19日にプロ野球界(NPB)の選手会がストライキを決行した前日の出来事を覚えておられますか?

2リーグ12球団の維持を巡ってNPBの経営者と選手会が連日ギリギリの協議を行っていたので、関係者の多くはシーズン終盤の土曜と日曜の試合に従来通り備える一方で、ストライキ実施の場合の備えも進めていた。だが、実際にストライキが実行されると決まった途端、彼らはその対応に追われた。例えば、チケット販売業者は代金の払い戻し、鉄道会社は臨時便や増発のダイヤ変更、放送局は番組の組み換え、広告代理店はCMスポンサーの入れ替え、球場の物品販売業者は仕入れ商品の手配変更、等々である。球場周辺のレストランやグッズ販売店は試合中止に伴う顧客減少に直面した。もちろん、最も大きな影響を受けたのは当日のチケットを保有していた野球ファンであることは言うまでもない。

このように、プロ野球をはじめとするプロスポーツはビジネスの裾野が多岐の業種に広がっている。リーグと球団の収入の源が、1.チケット販売、2.球場内物品販売、3.テレビ放送権、4.商品化(マーチャンダイジング)、5.スポンサーシップ、であることからも明らか。実際に、リーグと球団を核にして多種の企業が絡んで一大産業を形成しているが、統計上、「スポーツ産業」はないに等しい。例えば、放送局の中にスポーツ局(部)が存在し、スポーツ関連番組が全体の放送時間の約10%を占めていても当該局(部)は放送業界に組み入れられている。新聞社の運動部も同じである。

そんな中、スポーツ産業の規模を推察する時、2003年に米国のスポーツ誌が公表した調査が参考になる。それによると、2001年の米国プロリーグと大学が計上した総売上は約318億ドル(1ドル=80円の換算で約2兆5,440億円)。これに対してスポーツ関連消費総額が約1,946億ドル(約15兆5,680億円)であった。このことは権利保有団体の周りを権利者の売上の約6倍の金が廻っていることを示唆している。これに従うと、プロリーグや大学の収入が増えると、それに応じて周辺の関連業者の収入も増えることになる。
例えば、リーグは放送権を放送局に売り、その収入を売上として計上するが、放送局は放送権利料に番組制作費と放送局の粗利益を加えてCM料としてスポンサー企業に販売するので、CM料金総額は放送権利料の数倍になる。また、読者がチームのロゴが付いた野球帽子を小売店で1,000円で購入したとする。小売の約6割が卸価格。契約者(ライセンシー)が球団に払うロイヤルティは卸価格の6%が平均的。従って、球団は小売1,000円の帽子から(1,000 x 60% x 6% =)36円の収入を得、残り964円はライセンシーなど多くの関係者が分け合うことになる。

以上のことから、NPBやJリーグが収入を増やすことは周辺の関係業者の収入増加に繋がって内需拡大に寄与することが理解できる。円高によって企業の海外進出が加速する現在、内需拡大に貢献できるプロスポーツ界の役割は極めて大きい。2011年のNPBと米国メジャーリーグ(MLB)との1試合当り観客動員を比較すると、NPBが24,966人、MLBが30,366人。観客動員力に関する限り、4対5の割合に過ぎない。しかし、1球団当り売上の比較になると、NPBが約100億円に対し MLBは約200億円。この格差は、上記収入源の内、1.チケット販売以外の分野で大きく水をあけられていることに起因する。だから、NPBの球団経営者、特にオーナーが先頭に立って、NPB全体でMLBの売上に追いつく態勢作りが急務である。
同時に、観客の増加を計る必要がある。そのためには球団の数を増やす手立てが不可欠となる。2011年、NPBの観客動員数が2,157万人に対し、MLBは7,343万人だった。この差は球団数の差に因る。1球団当りの収入を増やすと球団の増加も視野に入ってくる。内需拡大のためにNPB全体の構造改革を期待したい。

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以下、オリジナル原稿

横浜ベイスターズ(横浜)は2002年初頭にマルハ(現在、マルハニチロ)から東京放送(TBS)に譲渡された。その前年(2001年)の横浜は69勝67敗4分(.507)の3位、観客動員168万人でシーズンを終了している。当時の横浜は1998年に達成した日本シリーズ優勝時の戦力を維持できなくなっていたとは言え、依然として優勝争いに参加するだけの戦力は残っていた。TBSが、(1)球団が強い、(2)球団が黒字、(3)球団が出資する横浜スタジアムも黒字、(4)巨人戦の放送回数が増える、との理由で買収を決意したことに納得できる。
所が、2011年の成績は、47勝86敗11分(.353)、4年連続の最下位。この勝率では3試合の内2試合を負けている勘定になる。これでは観客の足が遠のくのは当たり前。観客は110万人だった。2001年に比べ60万人近く観客が減少。正に、横浜は泥沼にはまり込んだ状態だったのだ。

その横浜のオーナーシップが2012年シーズンからDeNAに変った。果して、親会社が変ることで来シーズンの横浜に躍進を期待できるだろうか?残念ながら、「否」と言わざるを得ない。横浜の近い将来については、球界参入時の東北楽天イーグルス(楽天)と比較するのが分り易い。新規参入の2005年シーズンを前にした楽天に横浜の経営陣と戦力が酷似しているからだ。一方、経済的環境は楽天よりも遥かに脆弱。親会社のDeNAの苦労は彼らの想像以上に厳しいものになると予想する。

承知の通り、楽天は2004年の選手会によるストライキを受け、当時の近鉄バファローズ(近鉄)を継承する形でプロ野球界に参入した。所が、球団戦力を見ると、合併・統合した近鉄とオリックスブルーウェーブ(オリックス)の2球団を合せた選手の内、実力・能力で下位半分を受け継ぎ、それにオリックスへの入団を拒んだ数名の選手を加えた陣容だったので、極めて頼りないものだった。
しかも、楽天の経営陣は球団経営の素人。監督も経験のない新人。そこで外国人GMに外国人助っ人獲得が期待されたが、1~2カ月のスカウトでは成果を挙げることは無理な相談。結局、楽天は開幕当初危惧された100敗は免れたものの38勝97敗1分(.281)で最初のシーズンを終えた。予想されたとは言え、不甲斐ない成績に2年契約であったにも拘わらず監督は1年で解雇。もちろん、成績だけが理由ではなかった。優勝に加わるだけの球団戦力を整えるに当って球団首脳と監督が将来像を描ききれない中で、監督自身にビジョンがないことが致命的だった。1年を経て、経験の浅い球団首脳は彼らを補完できる経験豊富な監督の頭脳を必要としたのだ。野村克也監督の起用は必然的だったと言える。

横浜の2012年シーズンは、球界参入時の楽天同様、球団経営の知識が乏しく経験のない球団首脳と新人監督の2人3脚でBaseball Operation(チーム運営)が進められるだろう。楽天と異なる点は、恐らく、経験豊かな高田繁GMが経営者と監督の間の緩衝役を務めることになるだろうが、GMの仕事は戦力を整えることなので、シーズン開始までに彼の任務の大半は終了する。現時点までは、2011年シーズンがチーム打率.239(リーグ5位)と防御率3.87(リーグ6位)だったにも拘わらず、大金を叩いて戦力強化に動いていない。逆に、4番打者の村田修一選手をFAで失ったので、明らかに戦力が低下した。高田GMが来シーズンに備えその手腕を発揮することはなかったようだ。
かかる環境下では、来シーズンも最下位争いに終始しそうだ。そうなれば、観客の増加は見込めない。DeNAが横浜市や神奈川県に馴染みがないため、場合によっては観客の減少が更に進むこともありえるので、赤字幅が拡大するに違いない。

球団のBusiness Operation(営業部門)では、楽天と横浜では雲泥の違いがある。楽天は参入時に宮城県と交渉をして球場改修費の全額負担の見返りに球場の営業権を取得し、球場使用料も年間5,000万円で契約した。球団と球場の経営の一体化ができた楽天は、チケット販売と共に看板広告と球場内物品の販売に営業を集中して初年度にして営業黒字を達成した。赤字が常態化していた他のパ・リーグ球団に衝撃を与え、ここからパ・リーグ球団の構造改革が進むことになった。
一方の横浜。横浜スタジアムとの球場使用契約は不平等と言って良い程圧倒的に横浜に不利である。「文化的公共財」の思想が一欠片も無い横浜スタジアムと何も球団支援策を講じてくれない横浜市が後に控える横浜は、構造的欠陥を抱えたまま赤字を垂れ流すことになるだろう。そして、その打開策を見出すことは難しい。

打開策について、敢えて言うならば、2軍を神奈川県から離して新潟か静岡に移すことが有益と考える。球団全体の経費削減、更には2軍の経営的独立を目指して、米国のマイナーリーグのように、2軍にもフランチャイズのシステムを取り入れることを勧める。神奈川県には2軍に適した球場がたくさんあるが、この際、2軍のフランチャイズを新潟または静岡に固定して、地方自治体と住民との絆を深めることに専念すべきである。この案は突拍子もない事ではない。現実に、北海道日本ハムが千葉県鎌ヶ谷市で2軍選手の育成を行っている。鎌ヶ谷のグランドで2軍戦が行われ、ささやかながらも入場料を徴収している。横浜は日本ハムを真似れば良い。横浜が2軍を新潟または静岡に移した後、更に大きな協力を自治体や住民から得ることが出来るようならば、1軍を移すことも検討できる。
球団の構造改革の一環として近い将来、必ず、2軍を完全なコストセンターではなく、プロフィットセンターに近付けることが求められる。横浜はその先鞭を付ける経営環境にあると思うが、如何だろう。

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以下、オリジナル原稿

大学でゼミを除く5つの授業で毎週レポートを課している。学生は宿題を嫌う。必然的に、彼らの間で私の評判はすこぶる悪い。だが、毎週レポートは彼らにも、そして私にも大いにメリットがある。レポートは1,200字相当。題目は、(1)私のブログ、(2)スポーツ経営関連書物、(3)新聞のスポーツ経営関連記事、の中から自由に選んで良いことにしている。案件に対する独自の調査と分析、及び、文章力の向上が彼らに対する私の期待。「継続は力なり」とは良く言ったもので、1年間レポート提出を続けると彼らが着実に力を付けているのが実感できる。私の方も彼らの意見はスポーツ界の今後の動向を洞察する上で参考になる。

11月と12月の彼らのレポートは読売ジャイアンツ(巨人)関連が多かった。彼らの意見が私の日頃の授業内容に影響を受けるのは避けられない。だから、彼らがバイアス(偏向)の掛かった見方をしていることを考慮する必要がある。そのことを勘案しても、おおよそ80%が巨人の一連の行動・言動に否定的意見だったのには驚いた。

学生の反応を読み取る限り、巨人は時の流れや環境の変化を見誤ってボタンの掛け違いを犯したようだ。彼らの意見を集約すると以下のようになる。
1つ目は菅野智之投手。焦点は「職業選択の自由」
ドラフト指名の抽選を日本ハムに引かれた菅野投手に同情をするが、ドラフトはリーグの新人雇用システムであり、球団の個別採用では無い。だから、ドラフトでは新人選手に職業選択の自由はない。もし、菅野投手が競合無しで巨人に入団することになっておれば、競合無しの無抽選が長野久義外野手、澤村拓一投手に続いて3年連続となる。巨人の囲い込みは酷過ぎる。これでは、骨抜きのドラフトだから、ドラフトを行う意味がない。
2つ目は清武英利元GMの記者会見。ポイントは「文化的公共財」
記者会見よりも清武氏が読売新聞の臨時取締役会で解任されたことが問題。意思決定が巨人では無く、読売新聞だったのがショック。球団経営にくちばしを容れる親会社の存在が明確になった。親会社の利益が優先された。巨人は文化的公共財ではない。
3つ目はフリーエージェント(FA)や自由契約になった選手の獲得。争点は「戦力の均衡」
FA宣言をした村田修一内野手と自由契約になったD.J.ホールトン投手を獲得。加え、FAの杉内俊哉投手も入団が決定。野球協約に違反していないが、他の球団の4番打者やエース投手を金の力で集めるのに反対。折角若手選手を育成していたのに、昔のやり方に戻るのに賛成できない。戦力の均衡が大事。巨人の考えは古い。

7年前大学で教え始めた頃、学生の大半はサッカーよりも野球に興味を示したが、最近は「する」「見る」両方で、サッカーが野球を圧倒している。彼らは親会社(出資会社)が露骨な干渉をしないJリーグに慣れ親しんでおり、プロ野球球団に親会社の名前を付けることに否定的姿勢を示す場合が多い。例えば、買収後横浜ベイスターズにDeNAを組み入れるやり方に賛成する学生は少数だった。このように、学生のプロスポーツに対する見方も変化している。読売新聞と巨人が、「巨人が勝てば観客は戻る」と考えて一度決めたことを覆したり、過去に通用した強引な選手獲得に走ったことを、学生及び恐らく多くの野球ファンは奇異に感じながら見つめていたと思われる。

とは言え、読売新聞と巨人には彼らなりの理由があったはず。そして、なぜ彼らは世間受けしない手法を取らざるを得なかったのか、その背景を分析することが重要だと考える。

通常、球団は5つの権利を現金化することで収入を得ている。それらの権利は、1)チケット販売、2)球場内物品販売、3)テレビ・ラジオ放送、4)グッズの商品化(マーチャンダイジング)、5)スポンサーシップ。この内、1)チケットと2)球場内販売は、球団がフランチャイズ地域で独占営業権を保有している。
残り3つの権利は、テレビが牽引してビジネス化するので、市場をフランチャイズ地域を超えて全国や世界に拡大することができる。5つの権利を上手に現金化している米国のプロリーグやイングランドのプレミアリーグが高収入を誇っているのに対して、日本のプロ野球とJリーグは権利処理が下手な部類に属する。
巨人の場合、2)球場内販売は東京ドームが管理するので収入がない。4)グッズの商品化は繊維企業が1球団との契約を嫌うので、大々的なビジネス展開を期待できない。5)スポンサーシップはセールス・キャンペーンに使うグッズが無いに等しいので、成約が難しい。以上の理由で、1)チケット販売、と3)テレビ・ラジオ放送の権利処理に集中せざるを得ない。昔はそれでも良かった。観客で東京ドームが埋め尽くされたし、巨人主催の試合は全て日本テレビが放送してくれたからだ。巨人は超優良企業であり、読売新聞の販売部数の拡大に大いに貢献できた。

所が、レジャーやエンターテイメントの多様化、及び、総体的な野球離れによって巨人の観客動員力が低下し始めた。テレビはチケット販売以上に巨人離れが進み視聴率が取れなくなった。巨人の収入の2本柱である1)チケット販売と2)テレビ放送が綻び始めたのだ。この状態が続くと、巨人のビジネスモデルが崩壊することになる。実は、このモデルは阪神タイガースと広島カープを除くセ・リーグの残り4球団に共通する。だから、巨人が危機に陥る場合、その前に3球団が確実にお手上げとなるだろう。その意味では、横浜ベイスターズを買収したDeNAはTBSと同じ苦しみを味わう可能性が極めて高く、球団の赤字幅の拡大は免れないと予想する。

上記の状況から、巨人にとっての最優先課題は観客動員の向上であることは明白。そこでの発想が「常勝軍団の巨人」だったのだ。そんな環境の下で、菅野投手獲得失敗とクライマックス・シリーズ初戦敗退が起った。読売新聞の首脳が焦るのは当然。そこで、突発的且つ刹那的に方針の大変換が行われ、清武氏の記者会見に繋がった。そして、大金を叩いての戦力補強となったのだ。

だが、この戦略変更には大きな矛盾がある。巨人の常勝は負け込む球団を生むことになるからだ。阪神と広島を除くセ・リーグ4球団は同じビジネスモデル。だから、巨人の勝ち数が増えると、3球団が優勝争いに参加出来ない場合も起り得る。その場合、収入が更に減少することになる。それでも今まで通り、セ・リーグ球団は巨人の言うことに素直に従うだろうか。それでは球団経営を行っていないことになる。

どんなに考えても、現在のビジネスモデルには無理がある。セ・リーグ球団を救い、そして米国のプロリーグ並みの収入を挙げるには、3)テレビ放送、4)グッズの商品化、5)スポンサーシップを1人の人物(組織)に一括管理させる以外方法はない。この状態をパ・リーグ球団の多くは望んでいる。何時、巨人と阪神を除くセ・リーグ球団がパ・リーグ球団に同調するのか、今年中に動き出すだろうか。この動向は巨人にも大いにプラスになることなのだが、巨人の方針転換があるだろうか。今年、巨人の観客動員力が去年よりも低下すれば、巨人も動かざるを得ないだろう。

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2011年の米国プロスポーツ界は大混乱が予想された。経営者と労働者(選手会)が4~6年の周期で結ぶ団体労働協約(CBA)の改訂を4大プロリーグの全てが迎える珍しい年だったからだ。各リーグは契約交渉の非公式な地均しを2010年の春頃から始めていたが、漏れてくる情報は労使双方の考えに相当な隔たりがあるとのことだった。そのため、大方のメディアはストライキ又はロックアウトは不可避との悲観的見通しを立てていた。特に、3月に契約終了になるアメフトのNFLは、4つのリーグの中で最初に契約交渉に入ること、及び、選手たちが他のリーグと比較して年俸が低いとの不満があること、から交渉が難航することは必至と思われた。

ところが、交渉が本格化する前に、経営者と選手会の双方が欧州と米国の経済情勢を不安視したようだ。欧州の金融不安が高まり、それが米国にも波及してきたからだ。そのため、労使の対立姿勢が緩んだ。スポーツ界の経営者は経済の動きに敏感だ。今ではテレビ放送権利料収入がチケット販売の収入を上回っているとは言え、入場料はスポーツビジネスの原点。景気変動に左右されやすいファンのチケット購入が入場料収入に直接影響を与えるので、経営者は景気後退時期にファン離れを起こすような労使紛争を避けたがる。同時に、選手側も強気に出すぎるとファンに嫌われることを熟知しており、景気が悪くなると経営者に妥協する傾向が強い。

そんな環境だから、契約交渉が最も熾烈になると推察されたNFLでもロックアウトを行い最終合意まで時間が掛ったが、予定通りシーズンを開幕した。アイスホッケーのNHLと野球のMLBに至ってはCBA期限終了前に新契約を取り結んだ。それほどに、労使双方が欧州の金融問題を懸念したことになる。唯一の例外がバスケのNBAだった。シカゴ・ブルズのマイケル・ジョーダンが人気を牽引していた頃と異なり、昨今のNBAは人気が下降傾向にあった。観客来場者の減少がその事実を端的に示している。だから、経営者にとって年俸を含む選手関連コストの削減は最優先課題だった。経営者がより有利な条件を求めて早々にロックアウトを決め、5ヶ月以上に亘って選手会との我慢大会を演じたのは必然的だったと言える。結果、例年ならば11月1日開始だったレギュラーシーズンが12月25日にずれ込んだ。

シーズンの最終日は固定されているので、当然、日程の大幅な縮小と変更を余儀なくされる。また、ロックアウトによってファンがNBAから離れてもおかしくない環境だった。そこで、新協約合意後、コミッショナーが素早く動き、ファン離れを阻止すべく粋な計らいを行った。初戦当日の12月25日はクリスマス。普段は離れている家族が一同に集まる時でもある。そんな折、開幕第1戦のカードが、何と、昨年優勝を争ったダラス・マーベリックス対マイアミ・ヒート、東海岸のライバルであるニューヨーク・ニックス対ボストン・セルティックス、そして常に優勝争いに加わるシカゴ・ブルズ対ロサンゼルス・レーカーズ、だったから全米の関心がこれらの試合に集中した。
日本のプロ野球に例えると、昨年度日本シリーズ対戦チームのソフトバンクと中日がシーズン開幕を飾ることであり、ニックス対セルティックスは巨人対阪神と見做すことができる。去年優勝決定戦を争ったチームが開幕初戦で対決することは日本では絶対にあり得ない。開幕時に交流戦を行わないし、そもそも試合日程はチーム同士の話し合いで決まることになっている。個々のチーム事情が優先されるので、リーグの経営戦略が全体のスケジュールに反映されることはない。

NBAのコミッショナーが強力な権限を行使できるから日程スケジュールも彼の戦略に沿う形で変更できるのだが、それも彼に自己中心的なオーナーたちを黙らせるだけのビジネスセンスがあるからこそできる技とも言える。リーグの損出を最小限に抑え、一方で収入の最大化を進めるビジネスセンスがコミッショナーに求められていることをNBAの開幕戦が示唆してくれた。

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2011年12月30日(金)

朝日新聞WebRonzaの投稿文が全記事アクセスランクで上位に入りました。
1. 9月24日掲載の「球団経営は自由競争だろうか?」が12月22日4位、そして、12月23日1位に。
2. 12月26日掲載の「日本ハムの戦略」が12月27日5位に。

Webの面白いところは、過去の記事が突然蘇ることです。9月の掲載記事に12月末になって、どんな人たちがどんな理由でアクセスしてきたのか分かりません。 しかし、投稿開始が8月。4ヶ月で1位を含めランクイン達成は嬉しいかぎりです。読者の皆さんに感謝。

良い年をお迎えください。

 

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以下、オリジナル原稿

2012年度の政府予算案が決まった。民主党政権になって最大の無駄は、2年半前に官僚主導政治打破を目指す「コンクリートから人へ」の政治改革に大いなる期待を込めて大多数の国民が民主党議員と民主党に投じた「投票」ではないだろうか。

今回の予算案では、選挙公約の象徴だった八ッ場ダムの工事再開、整備新幹線の未着工3区間の着工、東京外環道の建設再開と言った大型公共事業が復活することになった。これで、高速道路無料化や議員定数削減などと並び、民主党が衆議院総選挙で掲げた主要な公約が総崩れになった。しかも、税収が増えない中での予算膨張。姑息な手段で見掛け上予算規模を縮小しているが、実質的な歳出は過去最大。前の首相がペテン師と呼ばれたが、今や、民主党そのものが国民に対して「うそつき」になってしまった。
更に始末が悪い事に、一般会計の約半分を借金で埋めざるを得ず、国の借金は1,000兆円を超えてしまう。国際基準の国内総生産(GDP)との比較だと、日本は2倍になり、主要先進国の中で最悪。欧州の金融不安の引き金になり世界中から白眼視されているギリシャの借金がGDPの1.6倍だから、日本の借金漬けは箍が外れて制御不能状態と言わざるを得ない。

民主党議員が、国会での駆け引きや出身母体の利益のために奔走するばかりで世界の情勢や動向に鈍感では困る。財務規律はギリシャ、スペイン、イタリアだけの問題ではない。国債の格下げがフランスやドイツにも波及し、その波が早晩米国に達するのは必至。かかる状況だから、個人の金融資産や銀行に支えられて比較的安全と言われる日本の国債がいつ何時「売り」に転じるのか予断を許さない。そうなった時を想定(想像)して現政権は予算を組んだのだろうか。そのための増税と主張するのであれば、ギリシャ人やイタリア人同様、私は政府の方針に反対の立場を取る。政治家や官僚には申し訳ないけれど、まずは彼らが膨れ上がらせた1,000兆円の借金を半分の500兆円程度に削減してから増税を口にして欲しい。普通、会社の赤字を半減させるのは然程難しいことではない。要は、やる気の問題だ。

財務改善はJリーグも急務だ。プロ野球と異なり、Jリーグは2005年度から毎年各クラブの決算を公開するようになった。情報の公表はJリーグの先進性を表しており称賛に値する。Jリーグ全クラブの経営情報が完璧に揃ったのが2006年度から。私はサラリーマン時代に取引相手先の財務内容を把握するには、財務諸表を少なくとも5年間並べて数字の増減を分析すべきと教わった。それに倣い、J-1の18クラブの2006年~2010年の5年間の公表数字を見較べることにした。
それによると、2006年度の営業収入総額が543億円。5年後の2010年度は545億円。全く収入が増えていない。その間、当然の事とは言え、広告料、入場料、Jリーグ分配金も横ばい。折角各クラブの財務内容を公開しているにも拘らずそれを生かしきれず、リーグとクラブの双方共、最も重視すべき収入増加に繋がっていないのだ。各クラブの地域密着の営業活動は依然として不十分。加え、全国市場で展開するテレビ・商品化(グッズの販売)・スポンサーシップを一括管理するJリーグも力不足。現金化できる5つの権利の内3つを掌握しながら全収入に占める割合は10%だから、Jリーグ全体の財務内容が劣化するのは当然のこと。そのため、クラブは出資会社の広告料(一部補填)に依存し、その比率は50%に近い。出資会社の負担は広告料だけではない。5年間の各クラブの資本金と剰余金の動きを追うと、いくつかのクラブが債務超過を回避するために減損処理をしているのが垣間見える。

2011年度以降、J-1合計で40億円の純損出を計上すると資本金を食い潰すことになる。ギリシャと同程度の危機に直面していることをJリーグの経営者たちはどの程度認識しているのだろうか。経営者の奮起を促したい。

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以下、オリジナル原稿

読売ジャイアンツ(巨人)の内紛と横浜ベイスタース(ベイスターズ)の売却劇は一見すると別々の事柄に見えるが、仔細に分析すると、2つの事件からプロ野球の構造改革を促すべき共通の問題点を見出すことができる。今は奥深い小さな流れだが、近い将来本流となって本格的な改革を推し進めることになるだろうか。

意思の疎通を欠いた巨人首脳部とベイスターズの売却・買収に関った人たちの言動を辿ると、本来プロスポーツリーグで経営の主軸にすべき「文化的公共財」と「戦力の均衡」の考えが完全に欠落していることに気付かされる。由々しき問題である。しかも、日本プロ野球機構(NPB)が抱える問題はこれだけではない。山積の状態だ。人気があり球団の主力となる選手の海外移籍は球団の「利益」とならないが、NPBの球団は、米国メジャーリーグ(MLB)との収入格差から生じる有力選手のMLB移籍に直面している。最早、半端な数ではなくなった。一方、国内にあっては、テレビ視聴率の低下傾向と地上波放送の減少に歯止めが掛からない。そんな中、パ・リーグ球団は黒字化と独立経営の確立を最優先し、新しい流れを作り出そうとしている。
選手の海外流出阻止と球団の黒字化・収入拡大は密接な関係に有り、この課題の改善・解決には、12球団とリーグが、球団と球場は美術館・博物館・オペラハウス・コンサートホール同様、「文化的公共財」であるとの認識を共有する必要がある。同時に、どの試合も球場を満席にするために、米国のプロリーグと同じく「戦力の均衡」を経営の柱にすべきである。

2つの事件を基に、プロスポーツリーグ経営の本質を論じながら、NPBの将来のあるべき姿を考察することにする。

巨人の清武英利元球団代表兼GMの記者会見には皆が驚いた。彼が読売新聞グループ会長兼主筆、及び、巨人の会長である渡邉恒雄氏を強烈に批判したからだ。想定外の会見内容だったが、当初は普通の会社でも起り得る上司と部下のコミュニケーション不足と思われた。

資料-1 巨人の組織・指示系統

         球団会長
 グループ取締役会  
         オーナー
         
         球団社長
              財務・経理・総務、等の部門

  Business Operation Baseball Operation
   (営業)       (チーム運営・管理)
                 GM

                 監督
                      コーチ・スタッフ
                 選手

球団の組織と指示系統を資料-1で示すが、渡邉氏の職務と権限は読売グループの最高位。巨人はグループ内の小さな子会社に過ぎない。グループ内の人事序列では、球団社長と言えども本部長クラス、清武氏の場合は部長並み。超多忙な球団会長と社長とGMの間に意思の疎通が完璧に行われていたとは思えない。「鶴の一声」が過去に何度もあったに違いない。しかし、こんなことは一般企業でも良くある話だ。

所が、記者会見から1週間後、読売新聞が臨時取締役会を開いて清武氏の解任を決めた。これで様相が一変した。球団人事に対する露骨な直接介入によって親会社の読売グループには巨人を「公共に資する」との考えがない事が明らかになったのだ。また、この決議によって、「フランチャイズ地域に根付くべき球団は誰のものか?」との根本的命題を提議することになった。

資料-2 球団の収支構造

   収入          収支        支出 

   地方市場          選手年俸
    (1)チケット販売     選手関連経費(遠征費用など)
    (2)球場内物品販売    球場使用料
   全国市場         球団事務所経費
    (3)テレビ放送      役員・職員給与
    (4)商品化
    (5)スポンサーシップ

巨人を取り巻く経営環境を分析すると、巨人の収益低下傾向に歯止めが掛からないことに対する読売グループ首脳の焦りが今回の反乱の背景にあったような気がする。プロスポーツリーグが消費者(=ファン)に売る商品は「試合」。球団の収入項目を資料-2で見て欲しい。巨人は、5つの収入源の内、(1)チケットと(3)テレビ放送権利料にその収入の大半を依存している。なぜなら、(2)球場内物品販売は東京ドームが管理しており、(4)マーチャンダイジング(=商品化)と(5)スポンサーシップはビジネスとして殆ど機能していないからだ。
チケットがプラチナと評され、テレビ視聴率が高かった時の巨人は超優良企業であり、読売グループに多大な貢献をしたに違いない。しかし、今年、観客動員数は過去最低を記録し、巨人主催試合の地上波テレビ放送が更に減少した。これでは、近い将来巨人の赤字も有り得ないことではない。これまで「読売の、読売による、読売のための球団」を貫くため、巨人は、テレビ放送を読売-日本テレビのルートを中心に全試合を権利処理してきた。そのため、残された全国市場から得るべき2つの権利からの収入をリーグ全体で凍結せざるを得なかった。だが、今、収入減少に苦しむことになったのだ。
かかる状況を鑑み、読売グループ首脳は、ファンの巨人離れを阻止するために、観客を呼べる東海大の菅野智之投手の獲得とクライマックス・シリーズを勝ち上がっての日本シリーズ制覇に大きな期待を寄せたに違いない。しかし、2つ共に実現しなかった。そこで、渡邉氏は巨人フロントに「檄を飛ばした」心算だったのだが、清武氏は不当な介入と受け取ったのではないだろうか。

12月1日のオーナー会議で、横浜ベイスターズ(ベイスターズ)のTBSホールディングス(TBS)から携帯向けのゲームを生業とし、急成長を続けているDeNAへの譲渡が承認され、昨年来のベイスターズ売却が完了した。ベイスターズの売却・買収は1年以上に亘る時間と紆余曲折の交渉を経て終了したが、多くの会社と人が関与しただけに、交渉の過程でいくつかの問題点が浮き彫りになった。例えば、
1つ目は、ベイスターズの恒常的赤字体質。TBSが買収した時の2002年のベイスターズは黒字だった。しかし、選手補強に失敗し、近年は赤字が続いていた。収入構造を分析すると巨人と類似している。即ち、収入を(1)チケット(3)テレビ放送に依存する体質なのだ。だから、巨人同様、観客減少でチケット収入が落ち、テレビ中継の全国放送の減少で放送権利料収入が低下した。これがお手上げの要因である。
2つ目は、DeNAのベイスターズ買収目的。昨年の住生活グループが短期的な広告宣伝効果を目的にベイスターズの買収を試みたように、DeNAも商品名の「モバゲー」を球団名にしようと計った。そのために、DeNAが短期的視点で球団買収を行うのではないのか、また「文化的公共財」を認識していないのではないのか、との疑問符が付いた。今もこの疑念は完全に払拭されていない。
3つ目は、横浜スタジアムの経営姿勢。横浜スタジアム(球場)は第三セクター。市民のために存在する。ベイスターズの売却の交渉過程で、過去の経緯は別にして、球場使用契約が球場に一方的に有利な片務的内容であることが判明した。球団が大赤字を出す一方で、球場側は黒字。しかも100億円を超える剰余金の蓄積。潤沢な内部留保があるならば、球場は使用条件を緩和して、見返りにチケット代金の減額を球団に求めるのが「地域と共存」する球場のあり得るべき姿勢だが、実際はそうではない。
4つ目は、TBSの売却額。TBSとそのグループは、2002年にマルハ(現在、マルハニチロ)から53.8%のベイスターズの株を140億円で購入したが、今回、2002年以前から保有していた株と合せ、66.92%の株を65億円で売却した。10年間で資産価値が半分以下に減少したことになる。仮にMLBのオーナーたちが同じような案件の承認を求められたら、「否」との結論に至るだろう。なぜなら、彼らの球団保有目的は、会社保有と同じく、球団資産を高くした時点で買収額よりもより高い額で売却することにあるからだ。従って、NPBのオーナー会議でもTBSを除く11球団のオーナーの誰かが、資産を減額しての売却は相場の低下に繋がるので困ると、TBSに文句の一つでも言うのかなと注目したが、誰もそのことに触れなかったようだ。これではリーグ全体を繁栄させる思想は育まれない。

巨人の内紛とベイスターズの売却を通じて重要な問題点が浮上した。現状の権利処理システムの下では、巨人でさえ赤字になりかねないことだ。ベイスターズは大幅な赤字を計上し続けなければならなかった。所有がTBSからDeNAに移っても、ベイスターズの赤字体質は変らない。だが、他の球団も大同小異の状態で、資料-2で示す収入の各項目について満足な収入を挙げることが出来ずに、損益分岐点を上下しているのが現状だ。

この状況は、2004年の選手会によるストライキ後に改善されるべきであった。経営者側と選手会側が、「放送権と再配分」、「選手年俸抑制」、「ドラフト改革」、「選手移籍の活発化」等を推進する旨合意したが、当時は経営者に危機感が無く、全く改革は前進しなかった。構造改革が進まない間に、MLBがリーグを挙げて業績を伸ばした結果、MLB球団の平均収入額とNPBのそれとの差が約100億円に拡がった。更にその差が拡大する傾向にある。この格差が有力選手のMLB移籍を後押ししていることを勘案すると、早急に構造改革に着手して日米の球団収入格差を是正する必要がある。だが、その施策目的は、リーグ全体の増収・増益であることは言うまでも無い。この時にリーグと球団の経営的支柱になるのが「文化的公共財」と「戦力の均衡」の思想である。この2つの思想と権利処理が構造改革を進める上では表裏一体の関係になる。その理由を資料-2に従い述べることにする。

1. 地方市場のチケットと球場内物品販売(球場内広告看板を含む):
プロスポーツリーグの商品である「試合」は1球団では生産できない。試合は必ず2球団の共同作業で生産されるので、球団が個別に我儘を言うことは許されず、全球団によって構成されるリーグが会社組織と同じ機能を持つことになる。個々の球団にはフランチャイズ、即ち地域独占営業権が付与され、フランチャイズの地域に住む人たちが球団の最も大事な顧客(=ファン)になる。だが、このシステムは1人のオーナー対多数のファンの関係を構築し、「売り手市場」を形成する。このことからも、球団が地域密着のファンサービスを行うことは必然的であり、地域との共存共栄が求められる。球団がシーズン中に全勝することも無ければ、全敗することもない。6割の勝率で優勝に近付くことができる。球団は勝ったり負けたりするものだから、地域と一体との思想がなければ、全ての試合を満席にすることはできない。

物品販売は、チケット保有者が顧客になる。従い、チケットと球場内での販売はフランチャイズ地域限定の、所謂地方市場でのビジネスである。入場者数と売上が比例するので、チケット販売が優先されなければならない。2005年に球界参入初年度の東北楽天ゴールデンイーグルス(楽天)が球場との一体経営を計って営業黒字を達成した。地方市場のフランチャイズ地域で最大の収入を挙げる方法は「球団と球場の経営の一体化」であることを楽天が実現した。全国市場での収入が少ないパ・リーグ球団が楽天の経営手法に追随し、今では5球団が球団と球場の一体化を実現した。北海道日本ハムファイターズも札幌ドームとの協調体制を整えたので、パ・リーグの球団の大半が損益分岐点を上回る収入の域に達している。一方、阪神タイガースと広島カープを除くセ・リーグの4球団は球場との経営の一体化を進めることができない。この差が、現在、元気で勢いのあるパ・リーグと元気が足りないセ・リーグとなって現れているようだ。
「フランチャイズ制」と「球団と球場の一体化」は地域住民及び地方自治体との協調があって有効に機能する。球団と地元との絆が「文化的公共財」の思想である。この絆がなければ、地方自治体が「球場」を建設するための税金投入が正当化されない。文化的公共財の考えは親会社の球団に対する露骨な介入や利益誘導を容認しない。だから、チケットと球場内物品の収入増加を支える文化的公共財の理解を深める延長線上に、米国プロリーグの全球団のように、球団名からオーナー(親会社)の名前を消す作業が待っている。

2. 全国市場のテレビ放送、マーチャンダイジング、スポンサーシップ:
テレビの電波はフランチャイズ地域を超えて全国市場のみならず世界中に送ることができる。加え、テレビは映像を通じて、マーチャンダイジングの認知・知名浸透を牽引する。そして、マーチャンダイジングの商品群がセールスキャンペーンのツールに利用可能となってスポンサーシップがビジネス化される。テレビ、マーチャンダイジング、スポンサーシップの3つの権利は全国に展開すべきなので、個別に球団が権利処理するのではなく、誰か1人(例えば、コミッショナー)が一括管理するのが理に適っている。この場合も、1人のコミッショナー対多数の契約者の関係になり、「売り手市場」を形作ることができる。
コミッショナーの一括管理の下では、全国市場で展開する3つの権利から得た収入が全球団の共有勘定に蓄えられて全球団に均等分配される。これが「球団収入の均等化」を促すことになる。
球団収入の均等化は選手年俸総額の均等化を推進する。選手年俸総額と球団戦力は比例するので、コミッショナーが額に汗をして増収を計ることが、「戦力の均衡」の促進に繋がる。戦力の均衡を推し進めるに当っては完全ウェーバーのドラフト導入は不可避であるが、もっと重要なことは、戦力の均衡が対戦する2球団の戦力を拮抗させるので、手に汗する試合をより多く現出することになる。このことがチケットを購入するファン(顧客)の期待なのだから、球場を毎試合満杯にする最も有効な手段と言うことになる。

果して、巨人の内輪揉めとDeNAの球界参入は、ファンのために「パンドラの箱」を開いたことになるだろうか。

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以下、オリジナル原稿

2011年のシーズン終了後、ポスティング制度を利用して米国メジャーリーグ(MLB)入りを目指す日本人3選手に対する入札額が出揃った。ここまでの動きを見る限り、北海道日本ハムファイターズ(日本ハム)の周到な準備と戦略が際立って目立つ結果となった。日本ハムの戦略と次に続くダルビッシュ・有選手側の契約交渉に対する思惑について分析・考察する。

埼玉西武ライオンズ(西武)の中島裕之内野手、東京ヤクルトスワローズ(ヤクルト)の青木宣親外野手、日本ハムのダルビッシュ投手の3人がポスティング制度を利用してMLB球団への移籍に挑戦した。移籍の可否は現在行われている契約交渉に委ねられている。現行制度の下では、日本野球機構(NPB)の球団に所属する日本人選手がMLBに移籍を希望する場合、2つの方法がある。
1つ目は、フリーエージェント(FA)制度。1軍選手として規定在籍年数が9年を超えた選手はFAの資格を得ることができる。そうなれば、MLBの全30球団と条件交渉を行うことが可能となる。但し、MLB球団からNPB球団への移籍補償金は発生しない。
2つ目は、FA資格に満たない選手が申請するポスティング制度。入札制度なので、選手は入団する球団を選択できない。最高額を提示したMLB球団が選手との30日間の独占交渉権を獲得。その後の選手側代理人との年俸等の条件交渉結果、双方が合意に達すれば、入札額が選手の所属球団に支払われる。一方、契約不成立の場合、全てが元に戻って、選手は日本に留まることになる。

本論に入る前に、3選手に関する基礎データ(上段に年俸、下段に打率・勝敗)及び入札額を記すことにする。
 選手     2009年   2010年  2011年   入札額
中島裕之   2.0億円  2.5憶円  2.8億円  250万ドル(約2億円)
          .309    .314   .297
青木宣親   2.6億円  2.8億円  3.3億円  250万ドル(約2億円)
          .303   .358   .292
ダルビッシュ 2.7億円  3.3憶円  5.0億円  1,170万ドル(約40億円)
        15勝5敗  12勝8敗  18勝6敗

この3人は早くからMLB入りを口にしていた。特に、中島とダルビッシュの両選手については昨年具体化の動きがあったが、封印された経緯がある。西武・ヤクルト・日本ハムは当該選手の今年末のMLB入りが不可避であることを承知していたし、選手たちもその心積りで2011年のシーズンに臨んだはずだ。結果は興味深い形となって現れた。

ポスティング制度の下では、ダルビッシュに対する入札額は日本ハムの収入になる。一方、最高額を提示したテキサス・レンジャーズは入札額に加え、ダルビッシュに払う年俸も用意しなければならない。入札額と年俸を決める際に参考にするのがダルビッシュの最新の年俸であることは疑う余地が無い。日本ハムは2011年の契約更改時、2010年の成績が2009年よりも見劣りしたにも拘わらず、ダルビッシュの年俸を1億7,000万円増の5億円にした。日本ハムは、レンジャーズが5億円(約620万ドル)を基準に入札額と年俸額を算出してくれればベストだし、万一契約が不成立でもダルビッシュは日本で5億円に相応しい活躍をしてくれるのは確実だから、どっちに転んでも痛手が無い。だから、5億円は極めて微妙な金額だ。ここに日本ハムの戦略を見出すことが出来る。ダルビッシュもMLB行きを視野に入れて2011年を過ごした。統一球に対する適用力に優れ、スライダーが大きく曲がる統一球の特徴を味方に付けて、18勝6敗の成績を残した。結果的に、今回のポスティングでは、日本ハムとダルビッシュの作戦勝ちと言える。

それに比べると、西武とヤクルトは無策だったとしか言いようがない。中島と青木両選手も統一球に対する適用力が不十分だった。そして、最も理解し難いのは、年俸よりも低い入札額の受諾だ。選手がMLBに行きたい気持ちを忖度しての判断だと思うが、普通のビジネスセンスであれば、2.8億円や3.3憶円の商品を2億円で売ることは決してしない。MLB側からすると、西武とヤクルトの年俸査定は間違っていると言うことだろう。だから、通常の感覚ならば、「馬鹿にするな!」と入札額を拒否するだろうが、両球団がそうしないのが面白い。選手も、入団前から「控え」と明言されても「行きたい」と言うのだから、何をか言わんや。
今回のポスティングで、日本で1流であっても内野手や外野手の入札基準相場が250万ドルに設定された。後に続く選手たちには不幸・不運と言わざるを得ない。

入札が終わり、次の焦点はダルビッシュとレンジャーズとの契約交渉に移る。だが、ダルビッシュがボストン・レッドソックスの松坂大輔選手を上回る史上最高値の評価を受け、これからはこの入札額が色々な交渉時の基準になるので、ダルビッシュ側(彼の父親や代理人を含む)とレンジャーズとの交渉が複雑、且つ、難しくなった。なぜなら、ダルビッシュが2年待ってFA選手としてMLB入りを選択すれば、更に大きな年俸を得ることができる可能性がでてきたからだ。FA制度の下では、MLB球団はポスティング時の入札額に相当する移籍金を日本側球団に支払う必要が無い。従い、FAの場合、ダルビッシュはポスティングを経て得る年俸よりも遥かに高額な年俸を得ることが出来、結果的に、総年俸比較でFA制度利用が断然有利になるからだ。だから、ダルビッシュ側はレンジャーズとの契約成立を急ぐ必要性がなくなった。
ダルビッシュ側が短期的視点に立つのか、長期的視点で判断するのか、興味深く注目したい。

それにしても、2011年のダルビッシュの年俸を1.7億円増加(投資)して、1年で40億円に増やして回収しようとする日本ハムの作戦には恐れ入る。聞く所によると、日本ハムは単年度ベースで利益を確保できる体質になったそうだ。また、2軍選手の鎌ヶ谷での育成や地元自治体との協調も上手く行っており、2軍の育成環境はリーグ随一との評判だ。
私がNPBのコミッショナーを推薦できる立場にあるならば、躊躇なく、日本ハムの大社オーナーを推す。NPBは今、彼のような、長期的視点に立って戦略を構築し、実行できる人物を必要としているからだ。

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